源氏物語54帖、教科書で人気な「帖」は? 67年分をめくって確認したら… データから見える変遷も
大河ドラマ「光る君へ」で話題の「源氏物語」、高校で学びましたか?「源氏物語」が掲載されている古典の教科書はどのぐらいあるのでしょうか。計667冊の教科書を一枚一枚めくって、それを明らかにしたデータがこの秋に公開されました。全54帖(巻)のうちの掲載が多い巻やその変遷も見えてきました。(朝日新聞デジタル企画報道部・篠健一郎) 【グラフでチェック】源氏物語、教科書に掲載されたトップ3の「帖」は?
数カ月かけ667冊を確認
「源氏物語」は平安時代に紫式部が書いた長編小説。登場人物は200人以上おり、「桐壺」から「夢浮橋」までの全54帖で構成され、400字詰め原稿用紙に換算すると二千数百枚にもなる大長編です。 学校の教科書でもおなじみですが、実際はどの程度採り上げられてきたのでしょうか。 この問いに挑んだのが、東京学芸大学附属図書館(東京都小金井市)です。 東京学芸大は、教員を養成を担う大学として、多くの教科書をコレクションしています。その中から、戦後の1956年から2022年までの67年分の高校の古典分野の検定教科書667冊を対象としました。 司書と大学院生が手作業で、「源氏物語」が掲載されているかどうか1冊1冊を目視で確認。さらにどの巻が掲載されているのかを数カ月間かけて調べ上げました。 専門家の協力のもと、その膨大な情報を整理し、今年10月にオープンデータとしてウェブ上で公開しました。 実は図書館では、事前に2000年以降の中学校の教科書も確認したそうです。 司書の瀬川結美さんは「中学校の教科書では、『竹取物語』や『枕草子』はしばしば扱われていましたが、『源氏物語』は扱われていませんでした」と高校の教科書を調査対象にした理由を説明します。 記者がデータを分析したところ、「源氏物語」が掲載されていた高校の教科書は、全体の3分の2にあたる443冊でした。教科書名自体が「源氏物語」というものもありました。 「源氏物語」が専門で、今回の調査の監修をした東京学芸大の斉藤昭子准教授は「『源氏物語』は文章としては難しいとされている。高校に入ってすぐ学ぶのではなく、仕上げの教材で、古典学習の最終到達点として位置付けられています」と話します。 「源氏物語」が掲載されていない教科書を見ると、鎌倉時代以降の中世や近世など時代別に編集され、「源氏物語」が書かれた時代とは別の時代だけを対象にした教科書が多かったとのこと。 「古典教科書においては、『源氏物語』は基本的に読むべきものとされてきたことがわかります」