エイズとデルタのメモワール(回顧録)~パームスプリングス(前編)【「新型コロナウイルス学者」の平凡な日常】
■世界と「たたかう」姿勢 繰り返しになるが、私は海外留学を経験していない。それでも私は、熊本大学のⅠとのやりとりや、ルーベンからの教育的指導、コールドスプリングハーバーでの研究集会への参加(53話)などを通して、日本にいながらも「世界と対等にやりあえる研究をする」という意識を保ち続けることができた。そのような意識が、現在の私を形作るひとつの大きな要素になっている。 G2P-Japanとして世界と互角以上に「たたかう」ことができているのは、それまでのエイズウイルスの研究で培った学術的な基礎体力と筋力があったこと、そして、「世界とたたかう」という意志を共有できる仲間たちがいたからにほかならない。 この連載コラムでも少し触れたことがあるが(10話)、G2P-Japanの活動には、なぜかいろいろとケチがつけられることがままある。しかし自分で言うのもなんだが、日本発で、ゼロベースで、ボトムアップで、基礎研究の文脈で、ここまで世界と「たたかえる」体制を作ることができたこと。それくらいは素直に評価してほしいなあ、と思ったりもする。 ※後編はこちらから 文・写真/佐藤佳