「管理職にかかる過剰な負荷」は解消できるのか? 組織変革の要となる部門とは?
現場マネジャーには人事から武器を渡そう
こうした悪循環で現場のマネジャーが疲弊していく一方で、人事は人事で無能感に悩んでいます。エンゲージメントという概念や、それに付随した新しいHR施策がやたら流行っているので、経営層から「エンゲージメントを上げるための施策を考えろ」といった抽象的なお題が降ってくるのです。 しかし、現場のマネジャーが忙しいことはわかっているからこそ、人事部としてはなるべく負荷をかけたくない。その結果、当たり障りのない施策を投下して、「ただでさえ忙しいのに」とため息をつかれてしまうのです。 また、多くの組織では、現場のマネジャーと人事部では、現場のほうが強い、というパワーバランスになっています。「お前は現場を知らないから」と言われてしまうと、人事部は何も言い返せず、事業部に対して一歩引いた姿勢になりがちです。このことも、人事部が主導する施策が中途半端に終わりがちな原因の一つになっています。 このかみ合わなさを解決するためには、「マネジメントの民主化」をするしかありません。人材育成やマネジメントにまつわる理論を、経営陣やマネジャー層だけではなく、人事部、さらにはメンバー全員で共通言語化するのです。 まずは、人事が現場マネジャーから「お前は現場を知らない」と言われても、「こういう理論があるんですよ」と、ロジックで説明できるようになることが大事だと思います。 「エンゲージメントサーベイの結果が悪いから、メンバーとコミュニケーションを取ってください」というあいまいなお願いではなく、「メンバーの自己効力感を高めるには、こういうことをすると有効ですよ」「メンバーが落ち込んでいるなら、こういうアプローチはどうでしょうか」と方法論をセットで伝えることができるようになりましょう。 実際に現場でメンバーと接するのはマネジャーでも、そのときに使える武器を人事部から渡してあげられる――そうなれば、現場のマネジャーも人事部の話をもっと聞くようになるのではないでしょうか。