「管理職にかかる過剰な負荷」は解消できるのか? 組織変革の要となる部門とは?
メンバーの成長を左右するコーチャビリティとは?
もう一つ大事なのが、人材育成にまつわる理論を、育てる側(=人事部やマネジャー)だけでなく、それによって育つメンバー自身が身につけておくことです。私の支援先の企業の一つでは、このプログラムに一番熱心に取り組んでくれたのは新卒社員でした。私にとっても発見だったのは、「理論さえ渡せば、メンバーは自分で育つ」ということでした。 私の研修はマネジャー層には必ず受けていただいていますが、実はマネジャー層にはこれまでの経験や成功体験があるので、アンラーニングコストが高く、「忙しいのに人事が何か持ってきた」とやらされ感を感じてしまう人もいるのが現実です。終身雇用の幻想が崩れ、いつ辞めるかもわからない若手をなんで育てなきゃいけないんだ、という思いを抱えている人も少なくありません。 ですが、よく考えたら、成長はさせてもらわなければできないものではありません。上司が育ててくれなくても、自分で育てばいいのです。 というのも、最近の研究で、いくらマネジャー側がコーチングやフィードバックを熱心に学んでも、メンバー側のコーチャビリティのほうが、メンバーの成長に与える影響が大きい、ということがわかってきたのです。 要は、マネジャー側がどんなに心を砕いて何かを伝えようとしても、相手が受け取る気になっていなければ、ほとんど意味がない、ということですね。 コーチャビリティというのは、フィードバックを受け入れる能力を指す概念です。この20年ほど、コーチングやフィードバックを行なうマネジャー側の技術が脚光を浴びてきましたが、やはりマネジャー側だけの努力には限界がある、ということで、それらを受け取る側の技術も重要視されるようになってきています。 コーチャビリティと自信の相関関係を表すと、上の図のようになります。自信が低すぎると、「自分には無理です。変われません」ということになるし、逆に自信が高すぎると「自分は全部できているので、変わる必要がありません」ということになる。 どちらもマネジャー側の話を素直に聞けない状態にあるので、成長や進歩は止まります。だからこそ、まずはメンバー自身が、自分のコーチャビリティを考えてみる必要があるのです。