〈パリ五輪〉7歳での“代役”ダンスバトルデビューから世界トップレベルに。ブレイキン日本代表・Shigekix「好きなブレイキンだけ頑張って、学校の勉強をおろそかにするわけにはいかなかった」
自分にとって思い入れのあるひとつの技
ブレイキンを踊るB-Boyには、人によって千差万別のダンススタイルがある。 持ち前のフィジカルを生かし、アクロバットなパワームーブ主体で組み立てる「パワームーバー」。立ち踊りやリズミカルなフットワークで魅了する「スタイラー」。両手や片手などで逆立ちしながら音楽に合わせて飛び跳ねる「縦系」など。こうしたスタイルに独自のムーブを編み出してオリジナリティを追求したり、技と技の“つなぎ方”を工夫するため、ブレイキンは誰ひとりとして同じ踊りにならない。 むしろ他人と同じ踊りであることをよしとしない文化があり、すべてのダンス競技のなかで最も自由で独創的なことが、ブレイキンの最大の魅力ともいえる。 Shigekixさんのダンススタイルは、パワフルなパワームーブから高速かつ華麗なフットワークまで、バラエティに富んだ表現や技のつなぎが軸となり、その独自性の高さが大きな特徴となっている。 「自分のダンスで象徴的なのが、音にハメる『フリーズ』と音楽とダンスの調和を意識した『ミュージカリティ(音楽性)』です。たくさんのバトルに出場して、練習を繰り返して、試行錯誤しながら『フリーズ×ミュージカリティ』というダンススタイルが確立されました。 特にフリーズに関しては、小さいころから『しゃちほこみたいなフリーズをするキッズだよね』と周囲から言われていたように、自分にとって思い入れのある技なんです。音にはめて、いろんな体勢から体を静止させるのがフリーズの基本ですが、ときには複数のフリーズ技をコンボさせてダイナミックに魅せたりと、創意工夫しながら表現することを心がけています」 一方、ミュージカリティは自身のブレイキンの概念や観点を表す要素になっている。 「動きにミュージカリティが表れているときは、自分の踊りが気持ちよくできていると感じられる。調子のバロメーターになる“エンジン”のようなものですね。そこさえ噛み合えば、一気に自分のよさが全面に出る。逆に噛み合わなければ、自分のよさが全然出ない。 バトル本番では、DJがどんな音楽をかけるかはわからないので、少なくとも音楽が体に自然と入ってきて、自分の動きを音に乗せることができているときは、自分らしさが出ているなと感じています」 ブレイキンとして表現する際に、ただハイレベルな技を見せても意味をなさない。 というのも、ブレイキンは体操のように技の難易度を競うものではないからである。 その場でかかる音楽の雰囲気に自分の動きを合わせ、いかに音に乗せていけるかがブレイキンでは肝になる。 取材・文/古田島大介 撮影/下城英悟
Shigekix
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