「1・6」アメリカ議事堂襲撃事件 「白人の暴動」が意味するものとは?
第2(工業資本主義)の時代「南北戦争とマッカーシズム」
18世紀後半からの産業革命、そしてアメリカの独立とフランス革命を経て、19世紀は資本主義の時代となる。まずは蒸気機関の開発と製鉄法の大改良で先んじたイギリスで発達したが、その流れはいち早く、同じアングロサクソンの文化を主流とするアメリカへと移り、北部に工場制機械工業が成立する。 19世紀半ばに起きた南北戦争は、リンカーンという人物の理想主義が働いた部分もあるだろうが、北部の工業資本が南部の農園で働いていた奴隷を労働力として必要としたことが主たる原因であるようだ。イギリスからの独立が日本にとっての明治維新に当たるとすれば、南北戦争は太平洋戦争に当たるほどの、アメリカ史上最大の戦争であり転換点であった。北軍の勝利により、開拓者(農場主)と奴隷の時代は終わり、工業資本家と労働者の時代となる。トランプ大統領支持運動に南軍の旗が登場するのは、この戦争が、現在にまで続くアメリカ分断の大きな起点であることを示している。 そしてヨーロッパを主戦場とした20世紀の二つの世界大戦は、アメリカを世界でもっとも豊かな先進国に押し上げた。まだ歴史の新しい国が資本主義と民主主義のチャンピオンとなったのだ。 その増上慢に起きたのがマッカーシズムいわゆる「赤狩り」である。カール・マルクスの歴史観における、工業資本主義によって成立した労働者階級の疎外から始まる階級闘争と社会主義革命への動きを恐れた保守主義者による思想弾圧である。 『アメリカの反知性主義』を書いたR・ホーフスタッターは、このマッカーシズムを反知性主義の代表的な例としている。マルクス主義者が考えるように、資本主義から社会主義へという変化が進歩だと仮定すれば、その歴史の進歩を支持するのは、どちらかといえば知識階級であった。上院議員J・マッカーシーとその賛同者たちは、その知識階級に対して、かつて黒人に対して白人が行ったのと同様の暴虐を組織的に行ったのだ。肌の色(黒)の違いの代わりに、思想の色(赤)の違いを基準にして。 そしてそれはGHQが日本を統治するのと同じ時代であった。その点からも、日本の戦後体制が決定的になる際の、アメリカの政治思想の対立の影響をうかがい知ることができる。