戦力外からの劇的再起星…なぜ横浜DeNA宮國は古巣巨人の“師匠”菅野に投げ勝ち4年ぶり勝利をあげることができたのか?
戦力外からの育成契約を得て支配下登録された横浜DeNAの宮國椋丞(29)が7日、横浜スタジアムで古巣の巨人を相手に移籍後初先発、5回を7安打1四球2奪三振2失点にまとめ、巨人時代の2017年7月12日のヤクルト戦以来、約4年ぶりとなる勝利をあげた。5回を投げ終えた時点で1点をリードされていたが、その裏にベイスターズ打線が一気に7点を奪って逆転。巨人のエース菅野智之(31)を攻略して宮國の劇的な再起の白星をサポートした。
「狙ってゴロを打たせた」
“番長”が宮國に話しかけた。 ウイニングボールを手にしての記念撮影。 「今日はいっぱい連絡がくるぞ。マウンドに上がるまでお世話になった人に、お礼の連絡をせなあかんなあ」 そして「おめでとう」の言葉と共に握手した。 巨人から戦力外になった男が最高の形で古巣に“恩返し”を果たした。移籍後初登板で5回を投げ2失点。実に、巨人時代以来、4年ぶりの勝利である。 お立ち台に指名された宮國に涙はなかった。 「素直にうれしい。信じられない気持ちでいっぱい」 そして、こう続けた。 「このマウンドに立つまでに多くの方々に支えていただいた。感謝の気持ちを持って、マウンドに上がった」 それがプロ初勝利と移籍初勝利の違いだという。 ファーム落ちした濱口のローテーの空いたところに巡ってきたチャンスは、偶然にも、巨人戦になった。「意識しないと言えばウソになる」。三浦監督が、「緊張からか硬かった」という立ち上がりに元チームメイトたちの洗礼を受ける。 先頭の松原には145キロのストレートをレフト前に痛打された。一死から、吉川に甘いカットボールを捉えられ、レフト頭上を破る先制のタイムリーツーベース。わずか7球で先制を許す。 岡本にもシュート回転したストレートを右中間フェンスにまで運ばれ、2点目を失うが、打球を処理した桑原が、二塁を狙った岡本を憤死させて宮國を盛り立てる。 だが、ここからが生まれ変わった宮國の真骨頂だった。 「慌ててはいなかった。ここでズルズルといったら何も成長できないと言い聞かせて投げた。粘り強く。大怪我(痛い失点)をしないように(制球を)意識した」 巨人時代の宮國に比べてキャッチャーのスローイングのように右手を頭の後ろに持っていくテイクバックがコンパクトになっていた。 最速147キロをマークしたストレートで恐れずにインサイドを攻め、スライダー、カット、シュートで翻弄。巨人時代のウイニングショットだったフォークは、打者が二巡目に入ってから使い、3回には、世話になった坂本をスイングアウト。粘り強くゲームメイクしていく。 「いいバッターばかりなので気持ちで負けないよう腕を振って投げた。速い球をインサイドに投げ、狙ってゴロアウトも取れた」 4回には、岡本、中島に連打され無死一、二塁のピンチを迎えたが、亀井に対してカウント2-2から読みの裏をかきアウトサイドに執念のバックドア。続くウィーラーにはシュートで6ー4ー3の併殺打である。宮國はグラブを大きく叩きガッツポーズをした。 5回には一死から、ハワイ自主トレに同行させてもらっていた“師匠”の菅野に、この日、2本目のヒットを打たれた。打った菅野も打たれた宮國も苦笑い。だが、ここでも続く松原をシュートで二ゴロ。坂本には四球を与えたが、吉川は、高めにストレートを見せて低めゾーンにスライダーを落とす高低の揺さぶりでレフトフライに打ち取り、5回を投げ切り先発投手の役割を果たした。