なぜ横浜DeNA牧秀悟は史上初の新人サイクル安打を達成したのか…“虎”佐藤へのライバル心と“番長”が仕掛けたチーム内競争
横浜DeNAのドラフト2位ルーキー、牧秀悟(23)が25日、京セラドーム大阪で行われた阪神戦でルーキーとしては史上初となるサイクル安打を達成した。プロ野球のサイクル安打は2019年4月9日(甲子園)に阪神の梅野隆太郎が横浜DeNA相手に記録して以来、史上70人目、75度目となる快挙。なお試合は牧の5打点の活躍もあり横浜DeNAが10―2で勝利した。
「阪神ファンの祝福拍手に気持ちが高ぶった」
全力で走った。 「フラフラっと上がったので、もしかしてアウトになるかなとも思ったが全力疾走で」 9回先頭打者として立った第5打席。阪神の岩貞が投じた外角に浮くスライダーを引きつけ叩いた打球はライト線上へ向かって上がるフライとなった。 追うのは牧が「ライバル」と意識する阪神の怪物ルーキーの佐藤である。だが、一か八かのダイレクト捕球に勝負をかけるのか、それとも安全に行って長打を避けるのか、躊躇したかのように佐藤のスピードが緩んだ。打球はライン際に落ち人工芝で大きく弾む。フェンスに向かう打球を追う佐藤の背中を走りながら確認した牧はギアを入れて二塁ベースを蹴った。三塁ベースの手前で走塁速度を落とすほど、余裕の三塁打で大記録を達成。新人とは思えぬ度胸満点の顔をした牧は、少し笑ってベンチへ向かってガッツポーズ。記念の花束を手渡されると、“準ホーム”の京セラドームに駆け付けた虎党からも大きな祝福の拍手が起こった。 「凄く嬉しかった。ベンチも、球場全体から、阪神ファンの方々も拍手を下さったので凄い気持ちが高ぶった」 サイクル安打達成の条件でもっとも難しいとされた三塁打を残していた。 2回一死一塁から阪神の先発、伊藤将の外角のストレートに逆らわず右翼フェンス直撃の二塁打。先制点につなげた。続く3回に今度は二死一、三塁からまた外角のストレートを狙い打って右中間へ14号3ラン。「貫さん(大貫)が凄く頑張っていて追加点の欲しい場面。初球から思い切っていった結果」だという。 さらに4回二死満塁で2番手の齋藤からセンター前へ2点タイムリー。5打点目となる価値ある単打で、サイクル安打に王手をかけた。しかも、横浜DeNA打線が大量得点を奪う展開だったため、残り2打席は立てる。しかし、6回は小川の初球の高めに浮いたカットボールに対して力んでしまってキャッチャーフライ。そして、9回に最後のトライとなる打席を迎えたのである。 もちろん記録は意識していた。 「(サイクル王手は)把握していて、チームメイトの方々に『こういうことは他にないから狙っていけ』と言われていた」 だが、三塁打は狙って打てるものではない。