何が7回「矢野vs原」采配勝負の明暗を分けたのか…オーダー大幅変更の阪神が巨人との首位攻防戦で逆転勝利
セ・リーグの首位攻防戦が3日、甲子園で行われ、3点を追う阪神が逆転で巨人を突き放し7ー3のスコアで勝利した。阪神は打線を大きく変えて挑み、5回までパーフェクトに抑えられていた戸郷翔征(21)から7番の大山悠輔(26)が7回に同点タイムリー、巨人はマシンガン継投を繰り出したが、阪神も代打&代走攻勢で対抗。二死満塁で1番に起用された中野拓夢(25)が変則左腕の大江竜聖(22)から走者一掃の3点タイムリー三塁打を放ち勝ち越した。阪神はマイナス0.5差で、首位の巨人に肉薄したが、首位攻防戦の明暗を分けたものは何だったのか?
“5回完全試合”の戸郷が突如崩れる
7回にTG両軍ベンチの凄まじい駆け引きがあった。 一死からマルテがライトを襲う打球を放ち、松原があいにくの雨で濡れた芝によりバウンドが変化した打球の処理に戸惑っている間に二塁を陥れ、ロハスがストレートの四球。さらに糸原のセンター前ヒットでつなぎ一死満塁とした。ここで7番の大山に回ってきた。もう戸郷は青息吐息だったが、原監督は動かない。 5回まで阪神打線に“ゴロの山”を築かせてパーフェクトピッチング。6回に1点を失い、球数は91球。 原監督の「投げ切って欲しい」との思いと、大山の不振、3連投の“守護神”ビエイラをベンチ入りメンバーから外すというチーム事情も手伝い“一手”後手を踏む。 戸郷の初球のフォークが甘く入った。その失投を「初球から打つのが自分の持ち味」という大山がフルスイング。打球は三塁線を抜けていく、同点の2点タイムリー。戸郷はここで降板した。 昨年まで阪神のコーチを7年間務めた評論家の高代延博氏は、戸郷の背信投球に問題があったと見る。 「大山は初球から振ってくるバッター。大城は外角低めに構えていたが、入り方が不用意だった。戸郷は5回まで完全だったが、ここ4試合、80球から100球にかかる6回以降に突然、崩れる傾向にあり、そこをどう乗り越えるかに注目していたが、この日もそのパターンから脱却できなかった。原因は、体力、スタミナ面からくる技術への影響など色々と考えられるが、私はメンタル面が大きいと見ている。飄々と投げていくのが戸郷流なのだろうが、テンポやリズムがずっと一緒で、ギアの上げ下げがなく、メリハリに欠ける。つまり勝つピッチングを知らないのだ。先を読みすぎて野球を舐めているようにさえ映る。ここは同じく7度、通算100勝に失敗することになった阪神の西との共通点でもあるが、今後、エースと呼ばれる投手になっていくには、身につけていかねばならないマネジメント力だろう」 戸郷は6月26日のヤクルト戦で8勝目をマークして以来、5試合、勝ち星から見放されている。8月28日の中日戦は、8回1失点と踏ん張ったが、それ以外の試合では7回を投げ切ることができずにつかまっている。巨人が優勝を狙うためには、戸郷が“7回の壁”を超える力をつけることが条件になるだろう。