船の絶滅危惧種「ホーバークラフト」。大分で16年ぶりに復活する理由とは?現在、定期運航されているのは世界で1カ所のみの“爆音”珍乗り物!
フェリーよりはるかに速く海上を疾走、さらに陸地まで走れる「ホーバークラフト」という船をご存知だろうか? 【写真10枚】絶滅が危惧されている船「ホーバークラフト」はこんな感じ。海の上を「飛ぶ」乗り物だ 一般的な船と違い、ホーバークラフトは海面上を飛ぶように進むため、仕組みとしては飛行機にも近い。世界でも他に1カ所しか就航していないという、旅客船としてのホーバークラフト定期航路が、来年にも大分県でスタートする。 ■最高時速80Kmで「飛ぶ」 ホーバークラフトが「飛ぶ」秘密は、船体の下をぐるりと取り巻く「スカート」部分にある。
船の下部にあるファンから真下に空気を送ると、「バババッ!」という独特の音とともに、ゴム状のスカートが空気で膨らんでエアクッション状に変化、圧縮した空気を下方向に噴射して浮上。船体最後部のプロペラを回して推進力を得れば、最高時速80kmで海面の数十cm上を飛ぶように前進できる。 一方で、フェリーなど普通の船は、浮力で海水に浮かんで水面下のプロペラを回して進む。 水の抵抗を受けるため速度は約20ノット(時速40km弱)程度だ。おなじ船でも、海面に「浮かぶ」ではなく「飛ぶ」からこそ、ホーバークラフトはフェリーより圧倒的に速い。
しかも条件によっては、同様の速度で陸地も走れる。フェリーなら桟橋で降りてターミナルビルまで歩くような場所でも、ホーバークラフトならバスのように小回りを利かせて、上陸したうえで玄関近くまで運んでくれるのだ。 いわばホーバークラフトは「船・飛行機・バスの良いとこどり」な存在といえるだろう。 なお、2024年12月現在、大分県以外でホーバークラフトが定期就航しているのはイギリス・ポーツマスとワイト島間のみ。なぜ2カ所目が大分県なのか。その事情を探ってみよう。
■不便すぎる大分空港 大分県にホーバークラフトが就航した目的、それは「空港への所要時間短縮」だ。 大分空港はもともと市街地の近く(現在の大洲総合運動公園)にあったものの、移転候補地での反対運動もあり、県都・大分市から60km以上も離れた場所への移転を余儀なくされた。 空港への連絡バスは到着まで1時間以上もかかるうえに、九州横断道・大分空港道のインターチェンジに到着するまでの渋滞で、場合によっては「予定していた飛行機に乗れない」ような事態も、しばしば起きるという。