船の絶滅危惧種「ホーバークラフト」。大分で16年ぶりに復活する理由とは?現在、定期運航されているのは世界で1カ所のみの“爆音”珍乗り物!
しかし、大分市と大分空港の間にある別府湾を横切れば、直線距離にして30km程度での移動が可能。また、大分空港は海上の埋立地にあり、ターミナルビルまでの船の発着が容易にできる。 かつ、コンクリートの専用走行路(スリップウェイ)を経由して、空港のチェックインカウンターの至近距離まで運んでくれる。ここで「陸上だと遠回り、海上ならショートカット」「クルマ並みに速い」ホーバークラフトの導入に至ったのだ。 大分県は他県と比べて鉄道の使い勝手がいま一つで、もよりの新幹線駅(山陽新幹線・小倉駅)からは大分駅は100km以上も離れ、特急列車で1時間20分以上もかかる。かつ、首都圏からは800km、大阪からは400kmも離れており、遠方からの移動はほぼ飛行機一択だ。
しかし、肝心の玄関口である大分空港へのアクセスに、難がありすぎる。かつ九州の他空港は「電車で市街地まで数分」(福岡・宮崎)、「連絡バスで30分圏内」(佐賀・北九州)などアクセスが良い空港も多く、九州全体で年間300万人前後いて今後も増加が見込まれるインバウンド観光客を、大分県だけが取り逃しかねない。 だからこそ大分県は、約117億円という総事業費を費やしてでも、ホーバークラフトによる大分空港へのアクセス改善を図る必要があったのだ。なお、2023年に就任したばかりの佐藤樹一郎・大分県知事も、ホーバークラフト整備と大分空港の活用を公約として前面に打ち出していた。
ただ実は、大分市内~大分空港間は2009年までホーバークラフト航路が存在した。今回の航路開設は、運営は別会社ではあるものの、実質的に「16年ぶりの復活」だ。 ホーバークラフトはかつて日本国内の各地だけでなく、世界でも広範囲で就航していたため、一般的な知名度は未だに高い。かつてのホーバークラフト全盛期を知る方なら「今さら復活? 何で?」という方も多いだろう。「空港へのアクセスに難あり」「海上のショートカットが可能」といった好条件を備えていたはずの大分県で、なぜホーバークラフトは存続できなくなったのか。