船の絶滅危惧種「ホーバークラフト」。大分で16年ぶりに復活する理由とは?現在、定期運航されているのは世界で1カ所のみの“爆音”珍乗り物!
今回採用されたホーバークラフトくらいの規模だと、運べる乗客はフェリーに比べて半分~1/3程度(50~150人、今回の船体は定員80人)にとどまり、船会社にとって実入りが良いマイカー・トラック・貨物も積めない。そのうえに、ファンやプロペラを回す燃費が桁外れにかかり、空気を溜めるゴムのスカートも定期的に交換が必要となる。ホーバークラフトは「収入を得づらい、コストはかかる」状態であり、無理な値上げで客離れを起こす航路も少なくなかった。
また、浮上して進むために強風・横風に弱く、大分でも欠航が年20日程度は生じていたという。陸地で並行する国道213号も霧や風による通行規制に悩まされていたが、ホーバークラフトも同様に休航していては、クルマやバスから顧客を奪えるわけがない。 さらに、巨大なファンやプロペラ、エンジンの動作で金属音のような爆音があり、各地ともしばしば騒音問題に発展していたという(余談だが、筆者はホーバークラフトが就航していた香川県高松市の出身で、「港から1km先の学校の4階室内でも普通に聞こえる爆音」や、近隣の学校から「授業が止まる!」と苦情が出ていたような状況を、身をもって体験している)。
加えて乗り心地はお世辞にも良くはなく、「カッコいいから一度は乗りたい!」という人々を、リピーターとして定着させることができなかった。 ただ、大分では「空港アクセスで陸上より圧倒的に速い」という決定的な強みがあり、国内のホーバークラフトとしては最後まで生き残った。しかし、「大分空港道路」の全線開通によるバスの所要時間短縮で乗客は急減。中東の政情不安から来る原油高が重なり、3年連続の赤字で財務が急激に悪化する。
追い打ちをかけるように、船を建造した三井造船(現:三井E&S)がホーバークラフト撤退を表明、今後のメンテナンスが困難となった。運航会社の「大分ホーバーフェリー」は万策が尽き、2009年9月に経営破綻。ホーバークラフトは翌月に運航終了に追い込まれた。 ■世界中から消えたホーバークラフト 世界的に見ても、ドーバー海峡・香港・エーレ海峡のホーバークラフト航路が、架橋や海底トンネルの完成による航路縮小で姿を消している。日本だと、瀬戸大橋の架橋で運航終了に追いやられた宇高航路が同様の事例だろう。