昆虫ハンター・牧田習さんの人生を決めたクワガタとは? 子どもの「好き」に寄り添うために必要なこと
昆虫採集のために世界中を飛び回り、昆虫研究者やタレントとしても活躍する昆虫ハンター・牧田習さん。虫採りに明け暮れた少年時代は、家族や友人をはじめ、さまざまな出会いと環境に恵まれたと言います。 【画像】ミヤマクワガタの写真 子どもの「昆虫が大好き!」という気持ちに寄り添いたいと思いつつも、その魅力がわからなかったり、昆虫に対して苦手意識を持っていたりする保護者は少なくありません。子どもと一緒に虫採りや昆虫そのものを楽しむ秘訣について伺いました。
昆虫から学びっぱなしの少年時代
――初めて興味を持った昆虫について教えてください。 祖父がオスのミヤマクワガタを採ってきて見せてくれたのは、僕が3歳の時。人生で初めてのクワガタムシを前にして、大きなアゴや足の動きに「何だコレ? どうしてそんな不思議な動きをしているんだ!?」と、さまざまな疑問が頭を駆け巡りました。それと同時にエネルギッシュでかっこいい姿にも魅せられ、そこから昆虫のとりこになるのに時間はかかりませんでしたね。 ――ミヤマクワガタとはまさに衝撃的な初対面だったのですね。 そうなんです。ただ、初めてミヤマクワガタを見た時と、今ミヤマクワガタを見た時では感じ方が全く違うんですよ。僕は初めて見たからこそ感じられる衝撃があると思っています。何度も同じ昆虫を見ていれば、初めて見た時のワクワク感や驚きはどうしても徐々に薄れていってしまいますよね。僕も昆虫に対する知識や経験があるがゆえに、今となっては純粋な驚きは正直ありません。虫好きな子どもたちにとっては、そういった“初めて”や“きっかけ”がとても大事で、そこで生まれた感情を大切にしてほしいですね。 ――そこから、いろいろな昆虫にのめり込んでいったと聞いています。 はじめはクワガタムシに、その次はカブトムシ、カマキリ、バッタ、キリギリスとどんどんいろいろな昆虫に夢中になっていきました。 夏が終わるとクワガタムシやカブトムシが見られなくなっていったものの、秋口には草むらでカマキリやバッタを見ることができ、冬も春も、一年中昆虫を探しに行けることに気づいたんです。 運が良かったな、と感じるのは、一度高まった「虫採り熱」が夏を過ぎても冷めなかったこと。クワガタムシが見られた森に、春や秋に行ってみるとまた違う虫と出会えました。そういったことを繰り返しているうちに、どんどん興味の幅が広がっていきましたね。 ――熱が冷めなかった理由はあるんでしょうか。 大きな理由は、虫採りができる環境に恵まれていたことだと思います。当時住んでいた宝塚では雪があまり降らなかったので、一年中昆虫を観察できましたし、小学校にはビオトープが設置されていたんです。もともと運動やスポーツが得意ではなかったのもあって、休み時間はそこで虫採りに励んでいました。もし大都会の真ん中でビオトープがない場所に生まれていたら、今の自分はいなかったんじゃないかとも思っています(笑)。 ――虫採りに夢中になる中で、忘れられない出会いがあったとうかがいました。 中学1年生の頃には博物館に出入りするようになり、そこには虫に詳しい同年代の子たちがたくさんいて、 虫採り用品やトラップについてなど、多くのことを教えてもらいました。 その中には信じられないくらい昆虫に詳しい1つ年上の男の子がいて、彼の知識量と昆虫愛には驚かされるばかりでしたね。中2にして日本全国のほぼすべての昆虫を知っていましたし、今現在でも、昆虫に関して造詣が深い人の中でトップクラスだと思っています。彼とは奇跡的に家も近所で、よく一緒に虫採りに繰り出していました。夏も冬も年末年始も関係なく昆虫を追いかけ、採った虫を自慢し合ったりして、ひたすら楽しかったです。当時の自分に、本当に大きな影響を与えてくれました。