参院選で歴史作った「れいわ」が日本政治に生み出す渦
「弱者を救う政治」対立軸作り出す
安倍首相にとって、常識的な解散の時期は来年の秋である。今年10月1日には消費税が引き上げられ、新天皇「即位の礼」が10月22日、「大嘗祭」が11月14日に行われる。年内の日程は立て込んでおり、また年内に衆議院選挙を行えば、統一地方選挙と参議院選挙に続く3度目の選挙となって、野党は大変だが与党も消耗する。 来年夏の東京オリンピックが終わった後、米国のトランプ大統領と同じ時期に選挙を迎えるのが、17年に当選した衆議院議員の4年任期の3年目に当たり具合が良い。ただし消費増税が景気にマイナスになれば、「れいわ」の存在感が増すことになる。 安倍首相は年内解散に踏み切り、早めに厄介な芽を摘むか、泰然として常識的な来年秋の選挙を選ぶか、思考を重ねていると思う。一方で今回ダブルに踏み込んでいれば、「れいわ」がこれほど注目されることはなかった。面白くない参議院単独の選挙だったから「れいわ」が脚光を浴びた。 令和初の国政選挙は、少額の寄付に頼った「れいわ新選組」を正式に政党に押し上げた。そして議員になれないと思われていた重度障碍者に議員への道を拓いた。それらは歴史に刻まれる。 さらに3党合意によって与野党の対立軸が明確でなくなった政治に、格差拡大と弱者切り捨ての政治か、弱者を救う福祉重視の政治かという対立軸を作り出した。「小さな政府」と「大きな政府」に似た対立軸が再び日本政治に浮上した。
--------------------------------- ■田中良紹(たなか・よしつぐ) ジャーナリスト。TBSでドキュメンタリー・ディレクターや放送記者を務め、ロッキード事件、日米摩擦、自民党などを取材する。1990年に米国の政治専門 チャンネルC-SPANの配給権を取得してTBSを退職、(株)シー・ネットを設立する。米国議会情報を基にテレビ番組を制作する一方、日本の国会に委員会審議の映像公開を提案、98年からCSで「国会テレビ」を放送する。現在は「田中塾」で政治の読み方を講義。またブログ「国会探検」や「フーテン老人世直し録」をヤフーに執筆中