参院選で歴史作った「れいわ」が日本政治に生み出す渦
旧民主党政権の失敗と解散総選挙への誘惑
民主党政権が自滅して自民党政権が復活した時、総理大臣の座に返り咲いた安倍晋三首相はバブル崩壊後に20年以上続く「デフレからの脱却」を叫び、戦前の金融恐慌の時に高橋是清蔵相が採用した反緊縮リフレ政策を「アベノミクス」と称して打ち出す。それが円安と株高を招き、アベノミクスは大いにもてはやされた。 では、安倍政権は国民から熱狂的に支持されたかと言えばそうでもない。第2次安倍政権が誕生してからの選挙はいずれも投票率が低い。2013年の参議院選挙52.6%、14年の衆議院選挙52.6%、16年参議院選挙54.7%、17年衆議院選挙53.6%、そして今回の参議院選挙は48.8%である。60%から70%で推移してきた日本の投票率が安倍政権になってから低いままなのだ。なぜか。 私は旧民主党政権に期待し、失望した国民の心の傷がまだ癒えていないからだと思う。政治に対し「羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」姿勢が変わらないのである。ただ今回の選挙で安倍首相が衆参ダブル選挙に踏み切れば、低投票率から脱することは出来たと思う。 年頭の記者会見で、安倍総理にはダブル選挙に打って出る意欲がありありと見えた。北方領土「2島返還」で国民の信を問うことを考えていたはずだ。しかし日米安保体制がある限り返還は難しいというロシア側の姿勢は崩れず、ダブル選挙は見送られた。 それでも安倍首相はダブル選挙にこだわる。日朝首脳会談の実現を模索し、萩生田幹事長代理に消費増税延期のアドバルーンを上げさせた。公明党の反対を押し切れる大義があればダブル選挙は出来たはずだが、ついにその大義を見つけることが出来なかった。 なぜ安倍首相は解散に打って出たいか。野党第1党の枝野幸男代表が東日本大震災の時の官房長官だからである。国民に適切な情報を流していたのかと国民に過去の姿を思い起こさせれば、自分の方が総理大臣にふさわしいと訴えることが出来る。 だから選挙中に何度も「民主党の枝野さん」を連発した。枝野代表が野党第1党の党首でいる限り、解散・総選挙の誘惑は消えない。安倍首相も民主党政権に失望した国民の心の傷は癒えていないと考えているのだ。