参院選で歴史作った「れいわ」が日本政治に生み出す渦
財務省への「借り」と消費税廃止訴える「れいわ」
衆参ダブル選挙を見送ったことで、10月の消費増税は確実な見通しとなった。しかし安倍首相の本音は、増税をやめたいと思っているはずだ。増税で景気が落ち込むことになれば、今後の政権運営に致命的な影響が出る。だが「森友問題」で昭恵夫人の関与を徹底して隠蔽してくれた財務省に借りがあり、延期を強行することもできない。 唯一の例外はダブル選挙で大勝することだった。財務省との関係で増税延期を解散の理由にするわけにはいかないが、2島返還などの歴史的な課題を掲げて大勝すれば首相の権力は絶対になる。余力で増税延期に踏み切ることが出来る。そうなれば財務省は従うしかないと私は見ていた。 一方で私は今回の選挙で与党が改選議席の63を割り込めば、安倍首相は続投しながらも批判票が多かったことを理由に、消費増税凍結が国民の民意だとして、消費増税延期を宣言し、参院選直後に解散することもあり得ると見ていた。だが63をクリアしたのでそれもない。
では安倍首相はどのタイミングで解散に打って出るか。その判断に、今回の選挙で一躍注目を浴びた「れいわ新選組」の存在が関係してくると私は思う。「れいわ新選組」はこの選挙で歴史を作った。普通なら立候補など考えられない重度障碍者を2人も国会に送り込んだからだ。そのため国会議事堂の改修が行われ、重度障碍者に議員への道を拓いた事実は永遠に形となって残る。 しかも自民党が身内を優遇するために作った「特別枠」の制度を、自分の私利私欲と無縁の誰もが考えなかったことに使ったのだから見事である。この2人の当選で政治家たちが異口同音に「弱者に寄り添い、弱者のために頑張る」と綺麗ごとを言う姿が一気に色あせた。 そして山本代表の主張には「反アベノミクス」が鮮明である。安倍首相がデフレから脱するために採用した日銀の金融緩和という反緊縮の政策に対抗する形で、山本代表はデフレから脱するため「消費税廃止」を主張する。それを国債発行という反緊縮の政策によって実現するという。 目的はデフレの解消、手法は反緊縮、しかしアベノミクスは格差拡大と弱者切り捨ての「小さな政府」で、「れいわ」は「消費税廃止」と「奨学金チャラ」を実現し、格差を縮小し弱者を救う政治だと言う。 「消費税廃止」は安倍首相も本音では言いたい。だが森友問題で財務省に借りがあり、自民党には過去に3党合意を結んだ経緯もある。口が裂けても言えない。今の安倍首相にとって「れいわ新選組」は微小な存在だが、ほおっておくと増殖する可能性がある。旧民主党で消費増税に反対した小沢グループや共産党は3党合意に加わっていないため、「れいわ」と共闘する垣根は低い。 山本代表は消費税廃止でなくとも、消費税5%に賛成するなら一緒にやれると発言している。それなら立憲民主や国民民主の中から賛成する議員も出てくるかもしれない。それが次の衆議院選挙の争点になれば自公政権にとって厄介だ。そう考えればなるべく早く解散を打ち、枝野代表との一騎打ちに国民の目を引き付けようと考える可能性はある。