参院選で歴史作った「れいわ」が日本政治に生み出す渦
年初来、参議院選挙と解散総選挙を同時に行う「衆参ダブル選挙」への観測が後を絶ちませんでした。しかしこれは結局見送られ、単独で行われた参議院選挙の投票率は50%を切りました。盛り上がりに欠いた選挙の中で注目を集めたのは、消費税の廃止など「生きづらい人々を救う政治」を掲げ、「特定枠」制度を活用してALS患者の舩後靖彦氏と重度障碍者の木村英子氏の2人を国会に送り込んだ「れいわ新選組」でした。政治ジャーナリストの田中良紹氏に今回の参議院選挙を総括してもらいました。 【グラフ】過去最低は「44.52%」 令和最初の参院選の投票率は?
旧民主党政権が国民に与えた心の傷
令和元年7月21日に行われた第25回参議院選挙は令和初の国政選挙であった。争点は「年金不安」と「消費増税」といわれたが、与党も野党も従来の主張を繰り返すだけで目新しさはなく、メディアの報道もいつものワンパターンで面白くなく、時代の節目の初の選挙という気を起こさせなかった。 投票率は5割を切り、戦後2番目の低さとなる。有権者の半数以上が選挙に背を向けた。選挙結果も当初から予想された通りで、与党が過半数を制し、一方で改憲勢力は憲法改正の発議に必要な3分の2には届かず、与党も野党も勝利に沸く雰囲気にならなかった。 選挙の前と後で何が変わったのか。何も変わっていない。では国民は現在の政治に満足しているかと言えばそうではない。埼玉大学の松本正生教授が投票の前日に行った調査によれば、2対1の割合で不満足が満足を上回る。政治に信頼を寄せているかと言えばそれも違う。2対1の割合で不信が信頼を上回る。 ところが与党に投票するか野党に投票するかを問うと、4対3の割合で与党に投票すると答える。不満があるから野党に投票して政治を変えようとは考えない。そして選挙に行く前から選挙に行っても何も変わらないと思っている。それが5割を切る低投票率と、それなりの与党の勝利をもたらした。 何がそうさせるのか。私はやはり旧民主党政権の失敗が国民に与えた心の傷だと思う。日本を変えてくれると期待したがことごとく裏切られた。沖縄の辺野古新基地建設やTPP(環太平洋経済連携協定)で米国の言いなりになり、自民党が主張する10%の消費増税を受け入れ、政権交代しても何も変わらないことが証明された。初の政権交代で国民が学んだのはそういうことだった。