推し活ブームを牽引するダイソーの開発力「専門の開発部門があるわけではない」 9割が自社開発だからこそ誰もが推し活担当に
2021年にユーキャン新語・流行語大賞にもノミネートされ、今やすっかり市民権を得た「推し活」。その活動に大きく貢献しているのが100円ショップで販売されているグッズたちだ。「推し活」という言葉が存在しなかった時代からグッズの開発に取り組み、推し活ブームを牽引してきたDAISO(以下、ダイソー)に、100円ショップ市場における推し活グッズのブームの変遷と今後の展望を聞いた。 【画像】仕事もはかどる? テレビの上に推しをまつった“祭壇”が…ダイソー社員が地道に商品をカスタマイズして制作
■意外な形で押し寄せた“推し活”の波 きっかけは文房具コーナーから
9月下旬に組み立て式の「推し賽銭箱」や「2WAYひな壇」(どちらも販売終了の店舗あり)などを発売し、推し活に情熱を注ぐ人たちから「こんなのが欲しかった」「推しゴコロをわかっている」とSNSを中心に大きな反響を呼んだダイソー。今や、どの100円ショップでも推し活グッズは売れ筋で、店舗内に専門のコーナーを設けるほどの一大ジャンルとなっているが、ダイソーが手がけ始めたのは、まだ「推し活」という言葉がなかった2011年頃。この年、アイドルグループなどで自分が最も応援しているメンバーを指す「推しメン」がユーキャン新語・流行語大賞にノミネートされたが、そのムーブメントに呼応するべく、パーティー関連のコーナーでコンサートグッズの販売を行っていたという。 その後、徐々に販売するアイテム数を増やしていったのかと思いきや、「推し活」の波は意外な形で100円ショップ界に押し寄せたとグローバル広報課の岩橋理恵さんは振り返る。 「何の前触れもなく、ある時、突然、文房具のコーナーで透明のL版に近いB7サイズの硬質ケースが爆発的に売れ始めたんです。驚いてリサーチをしたところ、推しのブロマイドを入れて、携帯したり飾ったりする人が増えていることがわかりました。であるならば、いろいろなジャンルの商品を展開している弊社には、ほかにも今ある商品の中で、推しがいる人たちのニーズに合わせたものが提案できるのではないかということで、商品開発を進めていきました」 ダイソーが取り扱う全商品約7万アイテムのうち、9割が自社開発。既存の商品に推し活の要素を加えればゼロから作り上げる必要はないし、ニーズを感じてから商品として展開するまでのスピードも速い。そんな自社開発の強みを生かして、その後、文具のジャンルでトレーディングカードに加え、推しのカラーでフレームを作ったカードケースなど、次々と展開していった。 そして、最近推し活をする人たちの間で爆発的な人気を呼んだのが、ファッションコーナーで展開した通称「痛バ」の「痛バッグ」だった。透明素材のバッグにキーホルダーや缶バッジをたくさんつけることで、自分流の推し感満載バッグが手にできるとあって、XやTikTokにオリジナルの痛バを投稿する人が続出、売り切れが続き逆にクレームが来てしまうほどだったと岩橋さんは苦笑いする。 続いて話題を呼んだのが、アクセサリーとコスメ関連のジャンル。「推しのカラーのアクセサリーをたくさん身につけたい」「推しのカラーでネイルを飾りたい」といったファンの心理に応えて、オリジナルアクセサリーを作ることができる6色のビーズやネイルシールを販売。この推しカラーの展開は、靴下などのファッションから文具、日用品に至るまで、あらゆるジャンルに広がり、今も人気を呼んでいる。