高校卒業せず大学へ…「飛び入学」、利用者わずか152人、なぜ日本で広がらない?
高校卒業を待たずに大学に進学する「飛び入学」。「高校に2年以上在学していること(またはこれに準ずること)」「特定の分野で特に優れた資質をもつこと」を条件に、日本で制度化されて25年以上が経ちます。しかし、この制度を利用して早期に大学に入学したのは、これまでたったの152人(2023年5月時点)。海外の大学のように普及していない現状には、どのような課題があるのでしょうか。 【写真】2022年度飛び入学生の西本光佑さん
1998年、日本で初めて飛び入学の制度を導入したのが千葉大学です。現在は10大学(制度導入順に名城大学、エリザベト音楽大学、会津大学、日本体育大学、東京藝術大学、京都大学、桐朋学園大学、東京音楽大学、名古屋音楽大学。2024年1月時点)が飛び入学を実施しています。この中で千葉大学は104人と最も多くの受け入れ実績があります。 千葉大学理学部物理学科2年の西本光佑さんは、22年度にこの制度を利用して入学しました。千葉在住ということもあり、同大学の飛び入学のことは子どものころから知っていたそうです。 「実際に飛び入学を考え始めたのは高1の終わりごろです。数学や物理の魅力にはまっていく中で、一つひとつの数式や法則はつながっているはずなのに、授業や教科書ではそれぞれ独立したもののように扱われることなど疑問に思うことが増えていきました。そんなときに父から聞いた飛び入学のことを思い出して、高校の勉強をあと2年間続けるよりも、早く大学に入学したほうが、やりたい勉強ができるのではないかと思いました」 飛び入学については、両親は応援してくれたものの、通っていた高校では前例がなく、周囲からは「高校でしか得られない学びを手放すのはもったいない」とも言われました。しかし、「それなら飛び入学でしか経験できない学びもあるのでは」と思った西本さんは、挑戦することに決めました。 高2の12月、物理分野の課題論述試験と面接による飛び入学入試の方式Ⅰ*を受験しました。課題論述試験は2問で、試験時間はなんと6時間です。教科書や参考書の持ち込みは自由で、試験中の飲食もできます。 *千葉大学の飛び入学入試には、一般選抜の受験科目と面接(方式Ⅱ)や、高校3年生を対象とした9月入学(方式Ⅲ)などいくつかの方式があります。 「試験問題は制限時間以内に速く正確に解く問題とは違って、考えさせられる内容でした。大学のホームページ上の過去問で試験対策をしましたが、家で解いていたときは楽しかったのに、本番ではすごく緊張してしまいました。それだけに合格を知ったときは本当にうれしかったです。実はそれまで高校の同級生には話していなかったので、みんなに驚かれました」