高校卒業せず大学へ…「飛び入学」、利用者わずか152人、なぜ日本で広がらない?
個性を尊重してサポート
千葉大学では、飛び入学者に対しては、一般の学部生と一緒に学ぶ授業のほかに、「先進科学プログラム」という特別なカリキュラムを用意しています。これは専任教員との個別少人数セミナー、公費による海外研修などによって、世界トップレベルの科学者・研究者を育成することを目的としています。先進科学プログラム専用の研究室には、個別デスクとロッカーがあり、授業以外の時間も教員や所属する学生が集まります。 「入学前は素粒子物理学に引かれていたのですが、今は統計力学など非平衡系の物理学に興味があります。先進科学プログラムのセミナーなどを受けるうちに、興味が変わってきました。大学院に進んで非平衡系の物理学などを用いて生命現象を研究したいと思っています」 千葉大学は、学部によって3年間で卒業できる早期卒業制度を導入しています。西本さんも上の学年の授業も受けつつ、その制度を利用するかどうかについては迷っています。 「早く研究に進みたい思いがある一方で、自分の専攻とは関係がない数学や建築などにも興味がわいています。他の学部・学科の授業を受けながら、ゆっくりと学んでいくのもいいかなと思っています」
飛び入学生の8割は大学院に進学
千葉大学に飛び入学で入った学生は、学部卒業後、約8割が他大学も含めた大学院に進学します。一般選抜の受験科目と面接(方式Ⅱ)で飛び入学し、工学部ナノサイエンス学科を卒業した大原正裕さんは、千葉大学の大学院に進んだ一人です。高校時代から課題研究に取り組み、理科研究発表会での受賞経験もありました。 「工学部では『プロジェクト研究』という特殊な授業があり、早い段階で研究に取り組むことができます。テーマは自分で選び、具体的な研究方法は先生が教えてくれました。自分のやりたいことを実現する後押しを先生にしてもらいました」 大学院で博士号取得後は、企業や研究機関の研究職に就く、ベンチャー企業を起こすといった道がありますが、大原さんが目指しているのは大学の教員になることです。研究を続けたい思いと同時に、教育にも興味があるそうです。 「先進科学プログラムでは、1冊の難しい教科書を学年の垣根を越えてみんなで読み進めていくような自主ゼミがありました。そのゼミで先輩から教えられたり、後輩に教えたりする中で、教育に携わりたいという思いが強くなりました」