大腸菌を利用して無限リサイクル可能なプラスチックを作る研究
受賞理由
世界で生産されるプラスチックの99%が化石燃料由来です。異なる種類のプラスチックは一緒にリサイクルできないため、徹底した分別が必要になります。 また、Center for Climate Integrityの最新の報告書で指摘されているように、同じ種類のプラスチックでも、色や含まれる添加物が異なると一緒にリサイクルできない場合があります。そういう理由から、リサイクルするよりも、新品のプラスチックを生産する方がはるかに低コストになっています。 そしてリサイクルの困難さが原因で、人間は年間約4億トンのプラごみを排出しています。国連環境計画(UNDP)によれば、これまでに世界で排出された70億トンのプラごみのうち、リサイクルされたのは10%以下だそうです。 「プラスチックの使用をやめるべき」と言うのは簡単です。でも、プラスチックはすでに社会や生活のあらゆる場所にはびこっているので、そうは問屋が卸してくれそうにありません。 そこに「永遠にリサイクルできるプラスチック」がさっそうと登場して広く普及したら、その影響力が超巨大になるのは間違いないでしょう。
これからの展望は?
ヘルムス氏とスコウン氏は、同研究所所属のジェイ・キースリング氏と共同で、Cyklos Materialsというスタートアップ企業を設立しました。 同社は、無限にリサイクルできるプラスチックの技術を商業化して、化石燃料由来のプラスチックに取って代わるのを目的としています。ヘルムス氏は、来年中にはPDKプラスチック製品のサンプル提供を開始し、約3年後には新製品の販売を開始する予定といいます。 研究チームには、自社の製品にPDKプラスチックを使用できるかどうかを知りたいと考える企業の製品デザイナーが関心を寄せています。また、現在プラスチックを生産している化学企業も、新たなビジネスチャンスを狙って熱い視線を送っているようです。 新たなプラスチックの製造技術を世に送り出す準備ができたからといって、既存のプラスチックの再利用とリサイクルの進歩をあきらめたわけじゃありません。ヘルムス氏は今年4月初旬に、さまざまな磁気共鳴映像法を用いて分解中のプラスチックを可視化する研究論文を共同執筆しました。 研究についてヘルムス氏は リサイクルのプロセスそのものを検証して、どのように素材を製造すればリサイクルの効率をより高められるかを明らかにしています。 と語ってくれました。
研究チーム紹介
ヘルムス氏、スコウン氏、キースリング氏がプロジェクトを主導。この研究は、エネルギー省が管轄するローレンス・バークレー国立研究所の3機関である分子ファウンドリー、Joint BioEnergy Institute(JBEI)、Advanced Light Sourceが共同で行ないました。 2024ギズモード科学フェアの受賞者リストはこちらから。
Kenji P. Miyajima