なぜジャパンC夢の3強対決は名勝負になったのか?
一方のデアリングタクトも、4コーナー手前でもたつき、そこでコントレイルにかぶせられた。「(最後の)直線では内にモタれるところを見せた。今までは見せなかったけど、強い相手と戦って苦しくなったのでしょう」とは松山騎手の回想。 最後は荒れた馬場を走らざるをえなくもなった。キセキが作った速い時計のレース展開に2頭の3歳3冠馬は、最後の直線で試練を迎えていたのである。これが経験と実績を積んだ8冠馬と、まだ発展途上の3歳馬の実力差だったのかもしれない。 アーモンドアイは、これで15戦11勝。狙ったレースはほとんど逃すことなく、芝G19冠と自身の記録を更新した。さらに、生涯獲得賞金もキタサンブラックの18億7684万3000円を上回る19億円超えを果たし、歴代トップに躍り出た。文字通り国内最強馬。ジェンダーレスの時代を象徴するように牝馬の枠などとっくに超え、記憶にも記録にも残る伝説の名馬となった。 「彼女と走るときはいつも大きな緊張を与えられた。しかし、ほとんどウイークポイントがない。競走馬としてのピークはきょうだったかもしれないね」 アーモンドアイの力を最大限に引き出したルメール騎手は、こうおどけた。 エリザベス女王杯のラッキーライラック、マイルチャンピオンシップのグランアレグリアに続き、怒とうの3週連続G1制覇。アーモンドアイで天皇賞・秋を勝っており、騎乗機会で言えば、4連勝でG18勝は2018年と並んだ。 競馬評論家の棟広さんは、アーモンドアイの強さの理由をこう分析した。 「この馬には、今までも走破時計とか上がりタイムなど数字面で驚かされていたが、今回は自分が得意ではない舞台設定で勝った。価値ある勝利だと思う。好タイムは期待できないタフな馬場。2分23秒0のタイムはキセキが引っ張ったおかげでもあるが、馬場状態を考えるとかなり速いタイムです。それが能力を示しています」 世紀の一戦とまで言われ、かつての競馬ブームのような盛り上がりを見せた今年のジャパンカップ。3強対決が実現した背景には、それぞれ馬主、生産者などが異なっていた点が大きかった。さらに、コロナ禍により海外遠征がままならない状況であることがプラスに働いたが、暗い世相を少しでも明るくし、競馬ファンに夢対決を届けたいと各陣営が願ったことが歴史に残る名勝負を生んだ。