”予期せぬ妊娠”は誰にでも起こりうる…漫画家・鳥飼茜が伝えたいこと
長年取り組んできたテーマ「男女の性差」に加え、「死」と「喪失」を描いた『サターンリターン』、ミソジニーと性暴力に正面から取り組んだ『先生の白い嘘』などの作品で知られる漫画家の鳥飼茜さん。リアリティのある男女の心理描写で、現代社会が抱える問題を描き続けている彼女の待望の新刊『バッドベイビーは泣かない』の第1巻が11月21日に発売となる。 【漫画】「男女関係なく、中絶に関する情報はとても大切」鳥飼茜が作品で伝えたいこと 『サターンリターン』以来、約2年ぶりに手がけた同作は、「妊娠・中絶」をテーマとした作品だ。今なぜこのテーマをピックアップしたのか、そして、作品を通して鳥飼さんが伝えたいこととは──? じっくりと話を聞いた。
「大事なこと」は伝えつつ、気軽に読める作品を
そもそも鳥飼さんが約2年ぶりに筆をとり、そして、そのテーマとして、妊娠・中絶を選んだことはなぜだったのだろうか。 鳥飼4年間続けてきた連載『サターンリターン』が終わり、自分のすべてを出し切ったという想いが強かったんです。私生活でもひとつの区切りが付いたことで、空っぽになりました。その時は、どうしてもすぐに別の漫画を描ける気がしなくて。ただ少し時間を置けば、また描けるだろうとも思っていたので、悲観的ではありませんでしたね。 その際、時間だけはあったので、今まであまり見ていなかったドラマを集中的に見ることにしたんです。その時の自分には、軽いノリの作品がしっくりときて、なかでも軽妙な会話劇に元気をもらっていました。そうしていろんな作品を見ているうちに、“ストーリーはしっかりあるけれど、軽く読めるもの”が描きたくなって、ネームを進めてみたところ、結構、ぱーっと書けたんですよ。 編集者に相談したところ、「会話劇ベースで、鳥飼さんだから描けることを意識していきましょう」とアドバイスを受け、その方向性で進めていきました。性暴力をテーマにした『先生の白い嘘』、友人の自殺にまつわる『サターンリターン』はどちらもかなり重い作品だったので、私に対して、そういった印象を持っている人も多いことは自覚しています。でも、良かった部分もあったと思っていて。今回は、そんな大事な部分を残しながらも、もっと気軽に読んでもらいたいという気持ちで執筆にあたりました。