革新と普遍を併せ持つ10組の共演、「ツタロックDIG LIVE vol.16」現地レポ
yutori、あなたの感情を受け止める音楽
「ツタロックDIG、yutori始めます。よろしくどうぞ」 佐藤(Vo.Gt)がそう言うと力強く音を鳴らし、1曲目「君と癖」からスタート。「全力でウチらと遊んでくれ」という佐藤の言葉通り、フロアが大きなクラップを鳴らしたり拳を上げる中、内田(Gt)、豊田(Ba)も大きくステージを使って楽しそうに演奏する。サウンドはキレッキレな”動”の中にも、感情を刺激する”静”もあり、佐藤の歌声はより強く、浦山(Dr)のドラムの細かな音まで、しっかり届けいてくる。熱量高いまま繋いだ「センチメンタル」。さらに4人のロックな攻撃的な姿勢は増したが、フロアからのクラップの音量もさらにすごい。その光景に豊田も思わず何かを叫んでいた。ラストの「1、2!」の掛け声もステージ、フロアの双方タイミングばっちり。 「今日はここにいる全員で忘れられない1日を作っていきましょう」というMCに続いて始まったのは「白い薔薇」。佐藤の落ち着きの中に潜む、今にも崩れそうな儚さが表現された歌声が寂しげなメロディラインと絡み、サビではそのギリギリの感情が爆発する。歌詞に合わせた白の照明もさらに会場を引き込ませた。ただ良い意味でそのセンチメンタルさを打ち切るようなドラムとベースラインが鳴り響き、カオスな世界観にご招待する「有耶無耶」へ。こんな色素も持ってるのかと思わせたが、「教えて……ねぇ、ギター⁉︎」からの内田のギターソロで会場の熱狂は最高潮へ。彼ららしい洗練さや骨太さとはまた違う新しい姿を見せており、最後の佐藤の「ありがとう」も別人格のようだった。 「楽しい時間はあっという間で残り3曲です。最後までお付き合いお願いします」と話し、最新リリース曲「合鍵とアイロニー」と「巡ル」を繋げる。この2曲の流れと<情けないな>と今日一番の絶叫を見せる佐藤の姿を見ていると、自分の弱さを必要以上に否定してはいけないと感じた。最後の曲の前に佐藤は2年前の初出演からメインステージに出演できたこと、今日出会ってくれたことに感謝し「私たちは一生ライブハウスで音楽を鳴らしています。歌っています。あなたが何か嫌なことがあったら、あなたの泣く場所に、帰る場所になれるよう、いつでもあなたを待ってます。yutoriでした。ありがとう」というMCから「煙より」へ。大きな音楽への愛、バンドへの愛を彼らと確認しあったフロアは、サビ前の佐藤の「おいで」の一言で、ついに本当に大切にしたい感情が解放された空気に。ただそれはフロアだけでなく、ステージの最前に駆け出してギターを弾く佐藤と内田、フロアへ愛を叫んでいた豊田もそのように見えた。そんな全員を等身大に変えて<何でもできる>気持ちにさせる浦山の作る楽曲が本当にすごい。最後は全員一体となって歌い、佐藤は「音楽はあなたを否定することはない」と伝え、万感の思いが詰まった拍手を巻き起こして終了した。 <セットリスト> 1. 君と癖 2. センチメンタル 3. 白い薔薇 4. 有耶無耶 5. 合鍵とアイロニー 6. 巡ル 7. 煙より