革新と普遍を併せ持つ10組の共演、「ツタロックDIG LIVE vol.16」現地レポ
606号室、力を出し切った大阪のピアノロック
never young beachの「Hey Hey My My」のSEで登場。そして4人で音を鳴らし昇栄(Vo.Gt)の「大阪から、606号室です!」と高らかに叫び「未恋」からスタート。東京でのツタロックDIGは、Vol.13で15分尺のClosing Actも経て、ようやく辿り着いた初の30分尺。彼らの何度も演奏してきた代表曲だが、この日は一層の気合を感じ、そのステージ上の熱気に煽られるかのようにフロアからクラップが鳴った。2曲目「おとぎ話」は一転メルヘンで冒険感のあるワクワクなサウンド。楽曲を色付ける円花(Pf.Cho)のピアノと昇栄のギター、そしてワクワクの下地になっているのは、躍動感の演奏をするゆうあ(Ba)とくわ(Dr)のリズム隊のパワフルな演奏だ。そして畳み掛けるように「次の曲、めちゃくちゃ楽しい曲やるんで! 俺たちと飛んでくれますか!」と伝えて始まったのは「スーパーヒーロー」。後ろまでしっかりジャンプするフロア。円花の右手の拳を掲げたままのキーボードソロは、その後ろでも大きく見えた。 MCでは出演の感謝を述べた後「今、自分達が持ってる力を全部出し切るので、どうぞよろしくお願いします」と話し「私」へ。ストーリー性のある楽曲で引き込み、「ここから後半戦! まだまだいけますか!」の言葉から彼ららしい青春ロック「いつだって青春」を投下。その疾走感溢れるPOPナンバーにフロアも軽やかに染まり、頭の上で力強いクラップを鳴らす。その疾走感そのままに4人が4人の激しい音を鳴らしてから始まったのは「君のことは」。「未恋」と同じく長く愛される楽曲で、私も何度も彼らの地元・大阪のライブハウスで聴いてきた曲だが、またライブでの圧力が増していると感じる。そのスケールは初見のお客さんにもしっかり届いただろう。 拍手が鳴り終わると、円花がドビュッシーの「月の光」を静かに演奏し始める。その演奏の中、昇栄が「ラスト1曲。僕がギターも弾けなかった18歳の時に書いた歌を」と話し「静寂の夜」へ。今までの熱狂とは一転、重い闇夜に包まれたように変わる会場。1人の少年の不安と強い願いをそのまま書いた歌詞と歌声、それを受け取って大事にかつ全力で演奏する姿と音を、最後にじっくり受け取ったことが分かる拍手が鳴った。 今回のライブには「もうここまで来たら引き返せない」という強い気迫のようなものを感じた。4人だからこそ出せるロックで、これからも1歩ずつ上がっていってほしい。 <セットリスト> 1. 未恋 2. おとぎ話 3. スーパーヒーロー 4. 私 5. いつだって青春 6. 君のことは 7. 静寂の夜