鮭を盗み、イクラ持ち去り…迷惑行為で釣り場が次々閉鎖 その中で続く「奇跡」の場所には、住民の工夫があった
この河口では、30匹以上の鮭の死骸が転がっており、中には命が尽きた鮭もいたが、ナイフで腹を割かれた鮭が大半だった。鮭は地元の漁協などが個体数を増やすために稚魚を放流しているため、捨てられた鮭を見て怒りを覚える住民も少なくない。 他にも肩がぶつかるほどの距離に、無言で入ってくる人もいるなど、釣り場は殺伐とした雰囲気だった。「隣に入ります」「よろしくお願いします」などと声を掛けるのがマナーだ。 ▽密漁者の姿も また、川で鮭を捕獲することは禁じられているが、夜明け前で誰にも見られていないと思ったのか、水の上から木の棒で鮭の頭をたたいてとり、持ち帰る密漁者もいた。密漁は犯罪で、北海道警は鮭釣りシーズンになると、釣り場をパトカーで巡回している。 釣りは自身がプレーヤーかつ審判として自分を律しなければならないが、自主的にルールを守ることの難しさを感じた。 ▽釣り場なくなる危機感 鮭も釣り人も減った10月20日、今季の管理を終えるべく、江藤さんや釣り人約20人が清掃活動をし、記者も参加した。「今年もお世話になりました」と住民にあいさつしながら、釣り場の周囲約1キロをごみ袋片手に歩いた。
釣具のパッケージやファストフードのごみ、ペットボトル、ティッシュペーパーにくるまれた大便など、ごみ袋約30枚分に達した。 札幌市から参加した常連の男性は「いつも来る釣り場がなくなるかもしれないという危機感がある」と話し、黙々とごみを拾っていた。 ▽楽しめる環境を後世にも 今後も課題は多い。今秋、枝幸町内の人気の釣り場2カ所で、釣り人の行動が原因でトラブルが発生し、来年以降は閉鎖される可能性が濃厚となった。 うち1カ所は北見幌別川の左岸に広がる釣り場で、数カ月に渡ってテントやロープを張ったりして場所を占拠する釣り人が多い「テント村」とやゆされる場所。マナーの悪さが問題になっていた。閉鎖されれば、問題を起こしてきた釣り人たちがフーレップ川河口に集まることも予想される。 清掃活動の後、山本さんは参加した釣り人の前で呼びかけた。 「釣りは、けんかやトラブルを起こすためのものではない。たくさん釣って、家族に喜んでもらえるよう釣りをしてほしい」
江藤さんは有志会の輪が広がれば、枝幸町の別の場所も自主管理の対象として保全していきたいと考えている。 「仕事で飯が食えなかったころ、千円ちょっとのルアーを一つ買うのに悩んだ時にも、生きる楽しみをくれたのが釣りだった。女性や子どもも含め、誰もが釣りを楽しめる環境を後世にも残したい」