鮭を盗み、イクラ持ち去り…迷惑行為で釣り場が次々閉鎖 その中で続く「奇跡」の場所には、住民の工夫があった
既に最盛期を過ぎたこの日は魚の気配が薄く、記者の釣りざおに残念ながら当たりはなかった。だが、オホーツク海の雄大な風景を眺めながら、地元の釣り人と肩を並べて心地よく釣りを楽しむことができた。 ▽新型コロナ禍で問題噴出 釣りざおをしまい、有志会の江藤文人代表(46)と、地元の集落在住の山本敬副代表(48)に話を聞いた。 江藤さんは枝幸から100キロ以上離れた旭川市で建設関係の会社を営んでいるが、9~10月の最盛期は釣り場近くに止めたワゴン車で寝泊まりし、密漁や路上駐車の監視、清掃など保全活動をしている。 問題が噴出したのは新型コロナウイルス禍だった。屋外の安全なレジャーとして釣り人気が全国的に高まったが、ルールやマナーを守らない釣り人が増えた。フーレップ川河口でも、野外での排便、騒音、路上駐車など地域住民とのトラブルが急増した。 針が付いたごみを釣り場近くのコンビニのごみ箱に捨てる人も続出し、この店はごみ箱を閉鎖した。
人気の釣り場には人が殺到するため、早朝に向かっても車を止められないことが多い。そのため、鮭釣り師たちは前夜に釣り場入りして車中泊して朝に備える。記者もワゴン車内に鉄パイプと木材でベッドを組んで布団を敷き、車内で寝泊まりして北海道に滞在した。 限られた駐車場に車を止められなかった人が路上に駐車し、中には農場や民家の前など私有地に止める人もいる。地元住民の生活の妨げになる例が後を絶たないという。 ▽「釣り場の問題は地域の問題」 「釣り場の問題は地域の問題。釣り場の維持には、住民の理解が必要不可欠だ」。江藤さんは話す。 有志会は、地元の風烈布集落の出身・在住で顔が広い山本さんが住民の窓口になり、何かあれば有志会がいつでも対応できる態勢を作った。山本さんは「おかげで苦情は今のところゼロ」と笑う。 また、「ごみは持ち帰る」「夜間は車のエンジンを止める」「魚や魚の内臓は捨てないでください」など暗黙の了解とされてきた複数のルールを明文化し、看板を設置した。昨年末には有志会のホームページも立ち上げ、フーレップ川河口のルール以外にも北海道の鮭釣りのルールを周知したり、有志会のメンバー紹介などを掲載している。