鮭を盗み、イクラ持ち去り…迷惑行為で釣り場が次々閉鎖 その中で続く「奇跡」の場所には、住民の工夫があった
▽迷惑行為しにくい雰囲気作りを ただ、こうした活動はボランティアで強制力はないため、あくまで「お願い」だという。江藤さんはこう語る。 「呼びかけなどを通じて活動を理解する釣り人を増やすことで、釣り場で迷惑行為をしにくい雰囲気を作ることが大切だ」 釣り人同士のけんかや密漁など、警察や行政が出動する事態に発展すると、釣り場の立ち入り禁止に発展しかねない。有志会ではその手前で解決できるよう努めている。 言うことを聞かない人も多いが、自分より釣りがうまい人にはなかなか頭上がらないのが釣り人のさがだ。 後日、江藤さんと一緒に別の場所で釣りをした記者は、夜明け前から3時間竿を振り続けても釣れなかったが、日が昇ってから見ると、江藤さんは既に10匹ほどを釣り上げていた。 ▽釣り人の輪、じわり拡大 有志会の設立は2018年ごろ。他の釣り場で出会った江藤さんと山本さんの2人が意気投合し、「まずは足元から」と清掃活動から始めた。初めは「偽善者だ」などと後ろ指を指されたが、今では有志会は常連の釣り人や地域住民ら約10人に拡大している。
ルール設定には有志会で議論を重ね、2人の意見が食い違うこともあったが、毎年試行錯誤を重ねながら、最適なルール作りを目指している。 活動に賛同する釣り人は増え続けており、函館など道内の別の地域でも江藤さんらの活動に賛同する人たちが釣り場の清掃活動などを始めたという。 ▽3匹釣れたが後味悪く 「よし、食ったぞ」。記者は翌日、フーレップ川河口から10キロ以上離れた同町の別の河口でさおを出した。有志会の管理が及んでいないポイントだ。釣果は最大80センチの鮭3匹。鮭はかかった瞬間に竿先にずしりと重みがのり、力強い引きで最後まで抵抗し、釣り人を楽しませてくれる。 記者は釣った鮭を下処理し、宅配便で自宅に送り、郷土料理「ちゃんちゃん焼き」にしたり、切り身を乾燥させて鮭とばを作ったりと、鮭を余すところなく味わった。 ただ、この釣り場では、腹を割いてイクラにする筋子だけ持ち帰り、身を捨てる人や、他人のメスの鮭を盗む人が現れたりと、後味が悪かった。鮭を盗まれた男性は記者の隣でさおを出していたが「メスの鮭だけ盗まれました」とこぼし、呆然としていた。それを聞いた他の釣り師たちも絶句していた。