日銀マイナス金利解除でも円安進行…カギ握るFRBは6月利下げもある?
日銀は3月19日の金融政策決定会合でマイナス金利政策の解除を決定し、17年ぶりの利上げに踏み切りました。しかしドル円相場はむしろ円安に振れました。今後の為替はどうなるのか。影響を与えそうな米FRB(連邦準備制度理事会)の金利政策の動きについて、第一生命経済研究所・藤代宏一主席エコノミストが予想します。 【グラフ】日経平均が史上最高値更新 日本でも欧米並みの賃金インフレが起こる?
日銀の政策変更による円高誘導の難しさ浮き彫り
3月19日に日銀はマイナス金利及びその他金融緩和策の終了を決断しました。ここでいうその他の金融緩和策とは、長期金利を0%程度に抑え込むイールドカーブ・コントロール政策やETF(上場投資信託)を通じた株式の購入などが含まれます。 一般的に日銀の金融引き締め方向への政策変更は、円高要因です。しかしながら、その発表を受けて外国為替市場では円売りが加速し一時ドル円は152円を突破しようかという水準まで円安が進みました。円売りが膨らんだ背景には「これでしばらくは日銀が金融引き締めに動くことはない、仮に動いたとしてもその変化は極めてゆっくりだろう」との見方があったと思われます。今回の動きは、日銀の政策変更によって為替を円高方向に持っていくことがいかに困難であるかを物語ったように思えます。 もっとも、FRBが利下げに踏み切ればさすがに円高方向への推移が予想されます。筆者はこの先の12カ月で140円を割れる円高を予想しています。では、FRBの金融政策はどう動くのか。それを探るために3月のFOMC(米連邦公開市場委員会)を振り返ってみましょう。
3月FOMCの政策金利見通しは“ややハト派”の印象
まず、政策金利は大方の予想通り据え置きで、FF金利(誘導目標レンジ上限)は5.50%とされました。次にFOMC参加者が示した政策金利の見通し、いわゆるドットチャートに目を向けると、こちらは事前の予想に反して前回(23年12月)FOMC時点から不変でした。FOMC参加者が示した2024年末時点における政策金利見通しの中央値は4.75%と年内に3回の利下げ(1回の利下げは025%pt)があることを示す水準でした。年初来発表された経済指標の多くが景気と物価の粘り強さを示す結果となる中、2024年末の中央値が上方シフトするとの予想が多く、筆者もそう考えていたので、この数値からはややハト派(金融緩和に積極的)な印象を受けました。 同時に示された経済・物価見通しは2024年の成長率見通しが大幅に上方修正(+1.4%→+2.1%)され、それに伴い物価(コアPCEデフレータ)見通しも小幅に上方修正(+2.4%→+2.6%)されました。もっとも、物価見通しは2025年に+2.2%、2026年に+2.0%という数値が維持されました。つまり「短期では上振れるものの、中長期ではインフレ沈静下に成功」という見立てを修正する必要はないとの判断でしょう。