日本車メーカーはトヨタだけが生き残る…トランプ氏の「EV嫌い政策」で豊田章男会長の"予言"が注目されるワケ
米国大統領選に合わせて行われた連邦議会選挙は21日、すべての議席が決まり、共和党が議会の多数派となった。トランプ次期政権は日本経済にどのような影響を与えるのか。ジャーナリストの岩田太郎さんは「現政権で進められてきたEV関連の補助金制度が廃止される可能性が高まっている。日本企業含め、撤退や縮小を余儀なくされる自動車メーカーが出てくることは避けられない」という――。 【写真】トヨタ自動車の豊田章男会長(2020年3月24日、都内ホテル) ■EV補助金「1台につき115万円」のゆくえ 米大統領選挙で圧勝したトランプ次期大統領が率いる共和党が上下両院も制した。このことで、民主党バイデン政権の「2030年までに新車販売の50%を電気自動車(EV)にする」目標と、連邦政府のEV購入補助金制度が廃止される可能性がかつてないほどに高まっている。 1台のEVにつき最大で7500ドル(約115万円)の補助金が受けられる現行制度の下でさえ、直近の米EV需要は前年割れ、あるいは横ばいの月が続いている。補助金が止まれば売上がさらに先細ることが予想される。 その一方で、トランプ次期大統領はゴリゴリの反EV主義者ではない。むしろ、競争力のある国内外EVメーカーの間で米国内の開発・生産を競わせ、製造業の雇用を増やすことで、選挙戦の公約であった米国第一主義を実現させたい意向だ。 トランプ返り咲きで予想されるガソリン車の「復活」とEVメーカーの淘汰、そして輸入車への関税引き上げは、世界のEVシフトの流れや自動車産業全体にどのような影響を与えるのだろうか。日本の自動車企業はどう対処するのか。予測を試みる。 ■57兆円をつぎこんだ「EVシフト」はどうなるのか バイデン政権が2022年8月に米議会で成立させた「インフレ抑制法(歳出・歳入法)」は過去最大規模の気候変動対策だ。EV購入補助金(税額控除)やEVおよびバッテリー開発および生産、充電スタンド整備に総額3690億ドル(約57兆円)の予算をつけている。 スタンフォード大学のハント・アルコット教授やシカゴ大学のレイナー・ケイン教授などが10月に発表した論文によれば、購入補助金やメーカー支援も含めて1台のEVにつき最大で3万2000ドル(約500万円)が連邦政府から支出されている。 一方、2024年1~6月の上半期に米国内で販売されたEVの総数はおよそ60万台で、前年同期比7.3%増であったと、米自動車販売調査企業のコックス・オートモーティブが発表している。また、米財務省によれば、この期間にEV購入者が受け取った補助金の総額は10億ドル(約1550億円)以上に達した。