政策金利は当面据え置きか? 11月FOMC議事録要旨から何が読み解けるか
米FRB(連邦準備制度理事会)がFOMC(連邦公開市場委員会)の議事録要旨を公開しました。そこから今後の金融政策の行方をどう読み解けるのか。第一生命経済研究所・藤代宏一主席エコノミストに寄稿してもらいました。 【写真】日経平均なぜ3万円超え? 4つの視点から株価急上昇の要因を考える
「どれだけ引き上げる」から「どれだけ長く保つのか」へ
2会合連続で政策金利の据え置きが決定された11月FOMC(10月31日~11月1日)の議事要旨が発表されました。議事要旨の核は「(今後の利上げについて)慎重なアプローチを取ることが可能であり、インフレ低下の進展が不十分であることを示す情報が入ってきた場合にのみ、金利を引き上げる必要がある」というもの。これは端的に表現すると「インフレ率がよほど想定を上振れない限り、利上げの選択肢はない」と言ったところです。パウエル議長を含む19人のFOMC参加者の焦点は、金利を「どれだけ引き上げる」から「どれだけ長く保つのか」に移行しています。政策金利は現在の5.25~5.50%で当面の間、据え置きとなるでしょう。
経済指標が低下基調に 11月FOMC時点とは環境が変化
11月FOMC時点で得られていた経済指標は、インフレ率が鈍化していた一方でその他の経済指標は総じて強く、それがインフレ再燃の火種になるとの懸念をFed(連邦準備制度)に抱かせていました。実際、FOMCの1週間後に発表された7~9月期の実質GDP(国内総生産)は年率+5%近い高成長を記録しました。それら強いデータに囲まれていた10月下旬に10年金利は5%近傍まで上昇していました。そうした中で複数のFRB高官が「長期金利上昇がFRBの利上げを肩代わりする(した)」と発言するなど、それまでのタカ派姿勢(インフレ退治のための金融引き締めに積極的な姿勢)を修正する動きも垣間見られていました。 しかしながら、それから3週間が経過した現在、10年金利は4.5%を割れています。金利低下の背景には11月に入った後に発表された経済指標が総じて弱かったことがあります。製造業の代表的指標であるISM製造業景況指数や雇用統計などは景気の減速を示唆しました。また消費者物価指数は10月も順調に低下基調を維持しています。それらデータを受けて金融市場では利上げが完全に終了したとの見方が支配的となり、同時に2024年後半の利下げ予想が台頭しています。このように11月FOMC時点と現在の環境は大きく変化しています。