雲を見つめ、気候変動予測を精緻に 日欧衛星「はくりゅう」打ち上げへ
気候変動予測の精緻化を目指す日欧共同開発の観測衛星「はくりゅう(アースケア)」が、月内にも打ち上げられる。大気中の雲粒や微粒子の様子、雲の立体構造や仕組みを、搭載する4つの観測機器を連携させて解き明かす。日本はこのうち、雲の詳しい立体構造を調べるレーダーを開発した。世界初の、雲粒や雨粒の垂直方向の速度を捉える衛星搭載レーダーとして、期待が集まっている。
「水をつかさどる神獣」いざ天を目指す
はくりゅうは、宇宙空間で太陽電池パネルやアンテナを広げた全長が17.2メートル、打ち上げ時の重さが2.3トン。高度400キロをほぼ南北に回る軌道を1周90分で飛び、25日かけ地球をくまなく捉える。設計上の寿命は3年。米スペースX社の大型ロケット「ファルコン9」に搭載され、カリフォルニア州のバンデンバーグ宇宙軍基地から、24日時点の情報では29日にも打ち上げられる計画だ。欧州宇宙機関(ESA)がドイツの管制施設で運用し、観測データがイタリアのESA施設や宇宙航空研究開発機構(JAXA)を経て、国内の研究者らに提供される。 アースケア(EarthCARE)の名は、英語で地球を意味する単語「Earth」と、雲と微粒子(エアロゾル)、放射を調べる者の意の「Cloud Aerosol and Radiation Explorer」の頭文字の組み合わせに由来する。“地球をケアするための観測”に掛けた命名のようだ。 はくりゅうは、JAXAが4月に発表した和名。衛星本体が白く、太陽電池パネルが細長い尾のように見えることから、想像上の生き物「白竜」に見立てた。JAXAは「竜は水をつかさどる神獣とされ、大気のメカニズム解明を目指すという目的にふさわしい。白竜は速く飛べ、高速で周回する衛星のイメージにも合う」などと説明している。
雲の立体構造の理解が課題に
気候変動予測はコンピューターのシミュレーションなどで行うが、人類は関連する現象を理解しきれておらず、不確実性が伴う。その大きな要因が、雲や微粒子の効果だという。雲には、地表から出る熱をいったん吸収し、一部をまた戻して地表を温める効果や、太陽光を反射する効果がある。こうしたエネルギーのバランス「放射収支」が大気の温度を左右する。それには雲の厚さや高さ、雲粒の大きさ、形、水分の量などが関わる。また微粒子の存在が雲の性質を大きく左右し、太陽光の反射、吸収の度合いに響いている。