雲を見つめ、気候変動予測を精緻に 日欧衛星「はくりゅう」打ち上げへ
雲をつかむような?成果を期待
CPRの開発は2007年に本格スタート。当初は13年の打ち上げを予定したが、遅れを重ねてきた。富田氏は「(日欧が)それぞれ挑戦的なセンサー開発に挑んだ。CPRは高速で飛ぶ衛星から雲の速度を計測する必要があった。これに加え、送信機を(故障に備えた予備を搭載する)冗長構成のために2つ備えたが、2つ目の用意に時間がかかった。欧州のライダーは大出力の送信機の開発が難しく、時間を要した」と振り返る。
搭載するロケットも変更を重ねてきた。欧州のアリアンスペース社により、ロシアが開発した大型ロケット「ソユーズ」で南米仏領ギアナから打ち上げる計画だったが、2022年2月にロシアがウクライナに侵攻した影響で同社のソユーズ打ち上げが停止した。同社の新型機「ベガC」に変更したものの、その2号機が打ち上げに失敗するなどしたのを受け結局、同社のライバル機のファルコン9に変更された。世界で深刻化するロケット不足の影響が、ここにも響いた形だ。
佐藤氏は「計画に18年関わってきた私にとって、待ちに待った打ち上げとなる。長かったが、数値モデルが高度化するなどして良いタイミングとなり、感慨深い」と語る。 「雲をつかむような話」とは、物事が漠然として捉えどころがないことを意味するが、はくりゅうに限っては全く逆らしい。精細な観測を生かした研究を経て、“雲をつかむような”ビビッドな気候変動予測が生まれるのが待ち遠しい。
草下健夫 / サイエンスポータル編集部