小池百合子氏の都知事出馬で再燃「学歴問題」を理論的に解決する最新情報技術があった……ブロックチェーンの「記録改竄不能」の効果とは
ブロックチェーン技術の活用によって、過去の情報を改竄できない形で保存することが可能になる。その一つの応用として、「オープンバッジ」がある。これは、個人の学習履歴を保存する仕組みだ。この活用が広がれば、専門家の企業間移動が容易になり、日本の閉塞状態を打破することになるだろう。 【写真】日銀の独立性は、どこへ行ったか…植田総裁の仰天発言、岸田首相の重大問題
再燃した都知事学歴問題の根底にあるもの
小池百合子東京都知事のカイロ大卒業の真偽をめぐる疑惑が再燃している。 『文芸春秋』5月号に掲載された元側近である小島敏郎氏の手記は、この問題が持ち上がった2020年の都知事選の際に、これに対処して何が行なわれたか、その経緯を詳細に記述している。 この手記を読んで、私はジョージ・オーウェルのSF小説『1984』を思い出した。これは、未来国家オセアニアの話。真理省という国家機関が、過去のデータを書き換える作業を行っている。過去の重要な記録に対する改竄疑惑は、日本でもいくつか起きた。森友学園問題が、まだ記憶に新しい。 小池氏は、学歴詐称疑惑に対して、それまで、週刊誌で卒業証書を示したり、テレビに卒業証書を貸し出して、事実無根だと反論した。しかし、それらの真正性に対して疑問が呈されたのだ。それに対して駐日エジプト大使館のフェイスブックにカイロ大学の声明文が掲載されたのだが、小島氏の手記によると、その文案は、A氏という日本人が小池氏に頼まれて書いたものだった。 だから、この問題の根本にあるのは、卒業証書や卒業証明書は、誰もが信頼する記録システムにはなっていないということだ。もし改竄できない卒業証明システムがあれば、学歴詐称疑惑は、そもそも起こりえない。
「改竄できない過去」の上にこそ、未来がある
最新の情報技術は、記録の真正性に関する重要な解決策を産み出した。それは、ブロックチェーンだ。 ブロックチェーンは、ビットコインなど仮想通貨(暗号資産)の基礎になっている技術だ。仮想通貨取引がブロックチェーンに記録されると、それを改竄することは、事実上不可能になる。このため、取引があったことをブロックチェーンに記録しておけば、それが本人が仮想通貨を持っている証拠になる。 ブロックチェーン技術は、仮想通貨に限らず、もっと広い応用範囲を持っている。 バルト3国の1つであるエストニアでは、ブロックチェーン技術を用いて公的記録が保存されている。この記録は、誰も改竄できない。エストニア政府は、同国においては、現在が過去を変えることはできないと、誇らしく述べている。