排気量の大きいグレードが「松」なのか? ベストなエンジンを選ぶ考え方
クルマを買う時にエンジンの選択肢が一つしかないということはほぼない。例えばヴィッツに搭載されるエンジンは1リッター、1.3リッター、1.5リッターの3種類。多くの人はこれを松竹梅と受け止めるだろう。しかしちょっと待って欲しい。1リッターより1.3リッターの方が、そしてそれより1.5リッターの方が本当に良いのだろうか? 【写真】ボルボ「V40」の新エンジンに見る未来戦略 モノづくりニッポンへの重大なヒント こういう話をすると、なんだかプロだけが持つ特殊な鑑定眼がある様に聞こえるかもしれないが、そんなことは全くない。「ちょうど良い」という感覚は誰もが普遍的に持っている当たり前の感覚だ。「梅」より「竹」。「竹」より「松」という思い込みに惑わされているだけである。
人が自然に持っている感覚を信じる
この話をする時、筆者がいつも思い浮かべるのはカレーライスだ。何をふざけたことをと言われるかもしれないが、筆者は至って本気である。カレーライスを食べていて、ルーが足りなくなるととてもわびしい思いをする。ご飯の量に対してカレーが少ないのは貧乏臭い。だから多い方が豊か……だろうか? ご飯の量に対して多すぎるルーは少ない時と同じで幸せではない。昔から言うではないか「過ぎたるはなお及ばざるが如し」。 今回はそんな視点で、シャシーに見合ったエンジンについて考えてみたい。ちょうどボルボがモジュラーエンジンバリエーションを開発して、様々な出力違いのエンジンを同じシャシーに搭載しているのでそれを参考にしてみることにする。
一つのブロックで12種類のパワートレイン
ボルボは昨年からエンジンラインナップの一新に着手し、新世代に切り替え始めている。長期的な排気ガス規制に対応しつつ、燃費やパワーを向上させた新世代にふさわしいユニットであると胸を張る。確かにボルボはそれらを裏付ける数値を発表しているし、実際そういうものになっていないと次世代としては困る。しかし、実はこの新型ユニットがそれ以上にユニークなのは、直列4気筒の基本ブロック1種類で従来の全ての車種をカバーする戦略的ユニットである点だ。今年、トヨタのTNGAで話題になったモジュラー設計だが、1種類のベースユニットだけで全モデルを賄うという大胆なモジュラー戦略は前例が無い。 ボルボはこのブロックベースに、ハイブリッドを含むガソリンユニット8種、ディーゼルユニット4種類と、なんと発表されているだけで12種ものパワートレインを作り出して、全世界のボルボラインナップを賄うのだ。