排気量の大きいグレードが「松」なのか? ベストなエンジンを選ぶ考え方
手品の仕掛けは順列組み合わせだ。ボア径82.0ミリを維持してストロークだけを変え、排気量を1.5と2.0リッターの2種類用意する。これで排気量が違っても燃焼シミュレーションをガソリン、ディーゼルの2パターンだけで共用できる。燃焼シミュレーションとはエンジンの最も基礎になる部分で、燃焼室内の気流と着火から燃焼に至る「燃え方」の設計を意味する。 2種の排気量に燃料はガソリンとディーゼルが用意されており、その全てが直噴過給だ。これにターボチャージャーの搭載数、スーパーチャージャーやハイブリッドシステムの追加、変速機の種類などを適宜組み合わせることで、膨大なバリエーションを生み出す理屈だ。 このエンジン群によって、下はCセグメントのV40から、フルサイズSUVのXC90まで網羅するのだ。単純な車両重量だけ見ても1.5トンから2.0トン。3列シートのXC90の場合は7人フル乗車で荷物を積めば2.5トンにも届こうかという様々なクルマを走らせる計画だ。つまり同じ基本構造を持つエンジンのパワーが何種類も用意されているということで、シャシーとエンジンのマッチングを考えてみるのに極めて良い題材になるのだ。
さて、そのバリエーションは次のようになっている。 ■ガソリンユニット T2(1.5リッター ターボ 122馬力) T2(2.0リッター ターボ 122馬力) T3(1.5リッター ターボ 152馬力) T3(2.0リッター ターボ 190馬力) T4(2.0リッター ターボ 190馬力) T5(2.0リッター ターボ 245馬力) T6(2.0リッター スーパーチャージャー+ターボ 316馬力) T8(T6+プラグインハイブリッド 400馬力) ■ディーゼルユニット D2(2.0リッター ターボ 120馬力) D3(2.0リッター ターボ 150馬力) D4(2.0リッター ターボ 190馬力) D5(2.0リッター ターボ 220馬力) ユニークなのは、T2とT3には排気量が2種類あって、変速機との組み合わせによって排気量が異なる点だ。MTとの組み合わせではより低速トルクが重視されるため、排気量が大きいシステムが選択されている。ボルボの説明によれば、この新世代システムではそれぞれの名前は出力レベルを表すものになっているため、排気量が異なっても同一出力なら同じ名前になるのだと言う。 これらのユニットの内、ボルボの一番小さなモデル、V40に搭載されて日本に入って来るのは、現時点でガソリン1.5リッター・シングルターボのT3と、ディーゼル2.0リッター・シングルターボのD4、それにガソリン2.0リッター・シングルターボのT5の3種類だ。さらにややこしいことに、この内D4とT5はオプションとして純正ロムチューンをインストールすることで「ポールスター・パフォーマンス・パッケージ」に仕立てて馬力を上げることができる。