震災から1年、深刻なボランティア不足が続く能登「人手が足りない」「降雪期に入れば一層深刻化」の声も #知り続ける能登 #災害に備える
「以前の大規模災害では、初動で多くの人が関わり、その経験者が次のボランティアを呼び込む好循環がありました。しかし今回は長距離移動や水道や電気などのインフラ不備、厳しい雪や冬の寒さなど複合的な要因で、初めの一歩を踏み出すこと自体が難しかったのではないかと思います」
ボランティアへの肯定的なポストの少なさ
ボランティア不足を取り巻く背景には、SNS上の投稿でも顕著な傾向があったという。災害研究を行う福山市立大学講師の宮前良平さん(社会心理学)は、能登半島地震発生直後の約2週間、X(旧Twitter)上のボランティア関連投稿を分析した結果*1をこう語る。 「過去の災害と比較して、ボランティアを肯定的に捉える投稿が全国的には極めて少なかったんです。一方で、被災地からの投稿に限ると『助かりました』『ありがとう』といった肯定的な声がたくさん上がっていましたが、そうした肯定的な声が全国的に共有・拡散されにくい状況がありました。通常、災害が起こると現地で活動するボランティアの情報が発信されて、それが広まっていく形でボランティアに行く機運醸成がされますが、今回はそういった広がりがあまり見られなかったことが特徴かと思います」
さらに宮前さんは「正しいボランティア」像にとらわれすぎないことが大切だと話す。 「今回、道路の寸断で現地に行くことが難しかったり、初動の受け入れを石川県で一本化したりしたことで人数の枠が限られてしまったこともあり、特に自己完結で復旧活動に取り組める“正しいボランティア"だけが参加できるような印象が広がってしまったように思います。でも、家の片付けにきたとしても、片付けよりもまずはじっくり被災者の話を聞くことが求められる場合もあります。そういった柔軟に対応できることが、ボランティアの良さだと思います。『正しい』ボランティア像にとらわれるのではなく、より多様な関わり方があることを意識できればと思います。受け入れ方も、社会福祉協議会開設のボランティアセンターだけではなく、様々な民間団体もボランティアを受け入れています。そういった団体に寄付をしたり、情報を受け取ったり、平時から関係を持っておくことも大事かと思います」 あたかも「正しいボランティア」の形があるというイメージが広がってしまったことが、SNS上での肯定的な意見の減少にもつながっているのかもしれない。 *1宮前良平(2024) 令和6年能登半島地震発災初期におけるXでのボランティア言説の検討.自然災害科学.43(3), 551-560.