PTA役員の負担軽減は“有償・外注”がヒント。時給制で「パート事務員」を雇う愛媛県松山市PTAの事例
◆有償の「PTA事務員制度」のメリット
有償のPTA事務員制度のメリットは、どのようなところにあるのでしょうか。 「いちばんのメリットは、PTA役員の負担軽減です。 文書作成やPTA会費の出し入れなどはもちろん、書類の内容を学校にチェックしてもらうなどの雑務も担ってくださるため、役員はその時間を、企画・運営の質の向上のための対話や情報交換など有意義なPTA活動にあてることができるようになります。 小規模校では、教職員がPTA事務を担うことがありますが、会費の収入的にPTA事務員を置くことは難しく、本部の役員がサポートに回ることもあります」 PTA役員は任期が短く、教職員も異動があるため、年度が変わったら会長、副会長、校長先生がすべて入れ替わり、どのように運営したらよいかわからないという場合もあります。 そんなとき勝手を知ってくれているPTA事務員さんがいるおかげでスムーズな運営につながることも少なくないそうです。 ちなみに令和5年度、松山市内の小学校のPTA会費の平均は約5600円、中学校のPTA会費の平均は約5500円でした(年額)。 全国的にみるとやや高めですが、「有償のPTA事務員制度を廃止して、PTA会費を下げてほしい」などの声は、とくに聞こえてこないそうです。
◆PTA事務員が“会長以上に”発言力をもってしまうことも
一方で、有償のPTA事務員制度には課題もあります。 PTA事務員とPTA会長は、それぞれ異なる役割を担っています。事務員は、主に事務作業や連絡調整などの業務を担当。会長は、PTA全体のリーダーとして、活動の方向性を示し、組織運営を担います。 「しかし現状では、PTA会長が任期を終えて交代していくなか、PTA事務員は毎年変わらず、気づくと会長以上に発言力をもってしまうというケースもみられるのです。 PTA事務員が権力を握ってしまい、何かを変えたくても変えられない空気になって、結果的に組織が硬直化してしまうケースも見受けられます。 また、職員室にデスクがあることにより、学校の電話応対や来客対応をしてしまうなど、PTA業務と学校業務の線引きがあいまいになってしまうという事例もみられます」 これらの課題を解決するために、松山市PTA連合会では令和6年4月に「PTA運営ガイドライン」を策定し、ホームページ上に公開しました。 PTA事務員の役割の明確化や不適切な会計処理の防止など、PTA役員・PTA事務員に対するサポート体制を充実するべく、研修の開催なども企画しています。
◆自校のPTAで導入を検討する場合のポイント
有償のPTA事務員制度は、メリットがあるとともに課題も存在します。 そのため自校のPTAで導入するには、PTA事務員制度の運営に関するルール、学校との連携方法などを関係者の間で十分に議論する必要があるでしょう。 また、PTA事務員への給与をPTA会費でまかなえるのかなど費用対効果も考慮しなければいけません。 その他、PTA事務員の選考と役割分担、研修やサポート体制、導入後の評価、会員への説明なども必要です。 メリットとデメリットの両面を慎重に判断し、PTA運営の負担軽減対策の一例として参考にするのもいいのではないでしょうか。
長島 ともこ(子育て・PTA情報ガイド)