おかもとまり「死ぬことでしか理解してもらえない」 思い詰めた過去を乗り越えられた理由 #今つらいあなたへ
かつてモノマネ芸人としてブレイクしたおかもとまりさん。明るいキャラクターが印象的なおかもとさんですが、20代後半、あることがきっかけで精神的に傷つき、自殺未遂をするまでに追い詰められました。当時を振り返り、「真面目な性格で頑張り過ぎてしまった」とおかもとさんは言います。精神科の病院に入院し回復した現在は、クリエイターとして生きづらい人たちに向けた映画やアニメ制作に注力するおかもとさんに、苦しかった当時の心境や、それを乗り越えた方法、いま思うことについてお話を聞きました。(取材:たかまつなな/笑下村塾/Yahoo!ニュース Voice)
「死ぬことでしか理解してもらえない」と思ってしまった
――おかもとさんはものまねタレントとしての活動を2018年に終えていますが、その背景にはつらい経験があったと伺いました。 おかもとまり: 当時、親族の関係者のデリケートなことを知ってしまい、精神的にショックを受けてしまいました。私も向き合って頑張ろうとしたのですが、繰り返し苦しいことが起きてしまい、「もう死ぬことでしか、自分の気持ちが伝わらない、理解してもらえないんだろうな」と思い、行動に移してしまいました。 ――身近に相談できる方はいなかったのでしょうか? おかもとまり: 弱音を吐くことで頑張っていない、自分はできない人間だと思われることが不安で、相談しませんでした。でも、時々泣いてしまうこともあったので、1年後くらいに初めてカウンセリングに行ったんです。そうしたら先生に「そんな環境にいたら、誰でもこうなりますよ」と言われて、初めて味方になってくれる人が現れたので救われました。もう少し早くカウンセリングに行っていれば、救われていたかもしれません。 ――それで精神科の病院に入院されたんですね。入院時の様子は? おかもとまり: 3カ月入院したのですが、私がいた病院ではびっくりするほど治療というものがありませんでした。後から聞いた話によると、私のようなタイプの患者は“頑張り過ぎた人”なので、入院は休ませることが目的だそうです。 病院に入院している事実が苦しく、当時の私は「ここは熱海の旅館だ」と思うことにしました。一日3食出てきて家事もしなくていい、時間もたっぷりある。小説家が旅館にこもるように、作業時間だと思って講演会の内容を考えたり、当時制作中だったアニメの企画書を考えたりしていました。 もともと何かせずにはいられない性格でしたし、これは薬を飲めば治るというのではなく気持ちの問題だろうと思いました。それに私は明るいキャラクターと周囲に思われていたので「精神科病院に入院したことがバレたらどうしよう」と考えると苦痛で仕方なかった。だからここは病院ではなく旅館だと置き換えることで、ちょっと気持ちが楽になりました。 ――入院中も仕事のことを考えてしまうんですね。 おかもとまり: そうですね。入院中に色んな人と話して感じたのですが、私のように追い詰められてしまう人は、頑張り過ぎたり真面目過ぎたりするのかなと思いました。 私は入院と同時に離婚して、仕事も辞めちゃったので本当にゼロの状態でした。そんな時にふとテレビを見たら、某国のミサイル発射のニュースをやっていました。その時に、「もしミサイルがこの病院に飛んできて私が死んだら、今こんな悩んでいても苦しんでいても、過去も未来も一瞬で消えるんだ。明日生きられるなんて絶対に決まったことじゃない。今だけを見て生きよう」って思えたんです。そうしたらとても気持ちが楽になりました。 それで今何がしたいかを考えたら、シングルマザーになったばかりだったのでとにかく子育てがしたかった。私には子どもがいるって思ったら、人からどう思われようが自分が傷つけられようが、子どもの幸せな姿を見られたら自分も幸せだと思えました。子どもに笑顔を見せるためにも、そこから自分の今の気持ちに素直になれるようになって、良くなっていきました。今思うと当たり前のように感じますが、疲れたから休むとかそういうことを考えられない精神状態だったんだなと思いますね。