おかもとまり「死ぬことでしか理解してもらえない」 思い詰めた過去を乗り越えられた理由 #今つらいあなたへ
道はひとつだけじゃない、自分が生きやすい環境はあるはず
――退院後は、どのように心を安定させていたのでしょうか? おかもとまり: 自分自身を認めることですね。コンプレックスって隠しているから苦しいですけど、認めたら個性になると思うんです。お笑いをやっていた中で、芸人さんたちも自分のコンプレックスをネタにして笑わせているのを見て、素敵だなと思ったんです。それでまずは自分のことを好きになろう、自分の失敗や恥ずかしいところも認めて許そうと努力したら、すごく生きやすくなりました。私の最大のコンプレックスは今回の入院でしたから、この経験を認めてあげて発信することで、同じように悩んでいる方に少しでも寄り添うことができるのかなと思っています。 ――つらかった当時を振り返ってみて、今だから言えることはありますか? おかもとまり: とにかく環境を変えることではないでしょうか。「死にたい」と思っている方の中には、受験勉強だとか職場、家族とか理由があると思うんですが、その環境にいなければ、そんなことを思わなかったはずです。 私が映画を作ったきっかけは友達の自死なのですが、もし彼女に「生きる道はひとつじゃない」って伝えることができていれば生きていたかもしれない、と思いました。今の環境が嫌だとか、上手くいかなかったから失敗というのではなく、別の場所もあるし、生き方ってたくさんあると思うんです。 当時の自分に今だから言えることですが、自分をもっと褒めてあげれば良かったなと。ここまで頑張ったよね、死にたいって思っちゃうよね、って受け止めてあげればよかったです。真面目過ぎたからこそ、そうなってしまったと思うんです。疲れたら、まずは自分の心と身体に耳を傾けて、しっかり休んだら良かったと思いますね。 ――自分の心と向き合った結果、お子さんの幸せを考えられるようになってよかったですね。 おかもとまり: 離婚前は、離婚してパートナーがいなくなる環境を選ぶというのは不安がありました。でも、10年後が心配と思っても、地球が爆発したら10年後もない。考え過ぎずに適当にのほほんと「離婚しちゃった。ガハハ」って笑った方が楽かもしれませんね。子どものためには離婚しないという選択もあったのかもしれませんが、今は子どもにママの笑顔をずっと見せてあげていたいし、子どもを幸せにできる自信があります。 ―― おかもとさんが手がけているアニメや映画は“生きづらさ”を扱っていますね。 おかもとまり: 全ての作品で「生きる上での苦しさを少しでもラクに、楽しく生きられますように」ということをテーマにしています。思春期の男女のことを描いている「青の帰り道」という映画では、まだ人生経験が少ない思春期は生きることが苦しかったり、道が閉ざされているかのように感じるけれど、生きる道はひとつじゃないよ、と伝えたい。公開中のYoutubeアニメ「ウシガエルは、もうカエル。」では、子どもが親に愛されて満たされてすくすく育ってほしい、そして、親も愛を与えることで幸せになってほしいという思いで作りました。 私は「今すぐ死にたい」という人を止めることはかなり難しいと考えているので、そうならないために子どもや若い人、人生経験の少ない人が、自分の生きやすい環境を選ぶ手助けをしたいと考えています。たまにDMなどで「すごく楽になりました」と感想をもらって、すごくうれしくてやりがいを感じます。