「フード付きパーカーとタートルネックはNGです」 平均年齢31.8歳「美容師」業界の知られざる苦労話 「客にお願いしたいこと第1位」は納得のひと言
美容師になるには
美容師になるためには、ご存じの通り厚生労働省が認定した美容専門学校を卒業したあと、「国家試験」を受ける必要がある。同じ美容系の職業に「ネイリスト」があるが、こちらは民間の検定はあれど必須ではなく、ましてや国家資格があるわけでもない。 この違いはどこにあるのかというと、生活衛生上のインフラとして必須な存在であり、客の肌や髪に直接触れて施術するため、衛生面に関する知識や技術が保証・証明される必要があるのと、「ハサミ」という刃物を扱うためだとされている。 そのため、客の肌に触れるという面では最近急増しているまつ毛パーマなどのサロンで働く「アイリスト」にも、この美容師免許が必要だ。 現在の美容師の数は57万1810人(前年比1.8%増)。全国の小学校の教員の数よりも多い(47万4068人)のだが、美容師の特徴は「数」だけではない。その若さだ。 令和5年の賃金構造基本統計調査から計算すると、美容師・理容師の平均年齢は約31.8歳。全国の一般労働者の平均年齢は43.2歳であることに鑑みても、若者の多い業種だと言える。
職業病
また、美容師・理容師の年齢構成を見てみても、10代20代で58%、30代が約18%と、30代までで76%を占め、一般労働者の平均年代の40代以上はわずか23%しかいない。さらにこれは理容師も含む数字であるため、美容師のみに限るとより若者の割合は増えると考えられる。
労働者が若くなる要因を、ある美容師はいう。 「最新の流行をキャッチするのはやはり若い人の方が得意。専門学校を出たばかりで学ぶ技術も新しい。こうなるとやはりベテランは独立して経営側に回ったほうが賢明です。美容は個々の表現でもあるので、元々美容師には将来自分の店を持つことを目標にしている人も多いですし」 また、全く別の職業に転職してしまう人も少なくない。理由はもちろん様々だが、なかでも大きな原因になっているのが「職業病」だ。 「1日多い時だと5~6人お客様を担当します。体力的にはかなりきつく、体を壊してしまう人も多いんです」 「立ちっぱなしなので腰をやってしまうという人も多いですが、それ以上に多い職業病が『腱鞘炎』です」 そう聞くと、なんとなくハサミで髪を切る際に腕を酷使しているのではと思いがちだが、実はハサミよりも手首に負担を掛けるものがあるのだそうだ。 「『ドライヤー』です。小刻みに動かしたり角度を変えたりするので、手首にかなりの負担がかかります。機能として早く乾かせるというのはもちろん魅力ですが、現場の美容師がドライヤーに求めるものは速乾以上に『軽さ』だったりします」 美容師にはもうひとつ致命的な職業病がある。「手荒れ」だ。 「シャンプーが合わない人がかなりいるんです。なかには発疹が肩や首元にまで達してしまう人も。まあ、1日に何度もお湯とシャンプーやカラー剤に触れれば手荒れしないほうが不思議なくらいですが。せっかく国家資格まで取って『手荒れ』で離職しないといけない人たちをこれまで何度も見送ってきました」 手荒れ防止のため一般的な「ゴム手袋」をすると、髪の毛が指に絡まるため敬遠されていたが、最近では素肌と同じくらいの手袋も売っており、現場で重宝されているという。 筆者もそのゴム手袋を付けてシャンプーしてもらったが、全くわからなかった。