「フード付きパーカーとタートルネックはNGです」 平均年齢31.8歳「美容師」業界の知られざる苦労話 「客にお願いしたいこと第1位」は納得のひと言
美容師あるある
今回、美容師たち本人やSNSなどで見られた、職場の「あるある」について集めてみたところ、やはり客対応による内容が多かった。 「お客様のカラーの待ち時間に爆速でお弁当食べる」 「シャンプー中に会話してて笑いが出た瞬間、顔に乗せていたガーゼが吹き飛んで目が合う。めっちゃ気まずい」 「重たい雑誌やタブレットを顔の前に持ってきて読んでいるお客様に遭遇すると、『下向き過ぎて切りにくいこと知ってらっしゃる人だ』と妙に感動と感謝がこみ上げる」 最後に、客に対して何かお願いしておきたいことを問うたところ、最も多かったのが「じっとしていてほしい」だった。 「こちらからの質問に、いちいち頷かなくていい」 「ヘアマニキュアするときに頭がぐらぐら動くお客さん。頭皮にマニキュアが付いてしまう。リムーバーで取らないといけなくなり、大変なので動かないでほしい」 「シャンプー中、ネープ(首回り)を洗う際、頭を上げられるとシャワーが上を向いて噴射します。まさに噴水状態。洗いやすいようにしてくれているんだと思いますが、その必要は全くないので首の力抜いておいてください」 また、当日着てくる洋服についての要望も多かった。 「プルオーバー(前が開かないタイプ)のフード付きパーカーはNGです。カット、カラー、シャンプー、どの行程でもフードが邪魔になります」 「フード付きのパーカーを着ていらっしゃったお客様に『もし下に何か着られているようならパーカー脱げますか?』と聞いたら、脱いではくれたものの、その下がタートルネックだった。タートルネックも美容院ではNGです」 「ニットは毛がついた際なかなか取れない。カットする際に着ていただくクロスの袖口から手を通す際、腕が長いお客様の場合は、長袖のニットを着てらっしゃったりすると袖口にカットした毛がついてしまうことも。また、特に刈り上げる男性のお客様は、首元に細かな毛がつくことも多いです」 その他にも「予約時間には早すぎず、遅すぎず来てほしい。だいたい5分前くらい前だと助かる」、「セルフカラーは直しや修正が大変で、希望のカラーに修正できないことが多いのでやめてほしい」といった声もあった。 今回、多くの美容師にアンケートを依頼したが、普段客になかなか面と向かって言えないことが多いようで、そのなかでも最も多く答えてくれたのがこの「客への要望」だった。 やはりサービス業、感情をなんとか押し殺す「我慢の労働」なのだなと改めて彼らの気苦労に脱帽するのだった。 橋本愛喜(はしもと・あいき) フリーライター。元工場経営者、日本語教師。大型自動車一種免許を取得後、トラックで200社以上のモノづくりの現場を訪問。ブルーカラーの労働問題、災害対策、文化差異、ジェンダー、差別などに関する社会問題を中心に執筆中。各メディア出演や全国での講演活動も行う。著書に『トラックドライバーにも言わせて』(新潮新書)、『やさぐれトラックドライバーの一本道迷路 現場知らずのルールに振り回され今日も荷物を運びます』(KADOKAWA) デイリー新潮編集部
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