「正解答案」だった日米共同声明 踏み込んだ「台湾」問題と重い「宿題」
(3)北朝鮮政策
バイデン政権内部には、北朝鮮の核を認めながら交渉していく核管理の手法を訴える声が強くなっていると指摘されている。ただ、北朝鮮を核保有国と認めることは隣国である日本としてはどうしても拒否反応が大きい。トランプ政権が強く主張した北朝鮮の「完全で検証可能で不可逆な非核化(CVID)」というスローガンを菅首相は共同記者会見で述べ、共同声明には「北朝鮮の完全な非核化へのコミットメントを再確認する」という表記になった。拉致問題への言及を含め、この点などは日本側がしっかり米側と協議を進めたとみられる。
(4)菅首相の会見対応
日米首脳会談という国際的な檜舞台での菅首相の饒舌でない対応について、さまざまな意見があったかもしれない。安倍前政権であれば「『完全に』一致する」と言うであろうところも、淡々と「一致する」と形容詞なしで表現した。 この淡々とした言葉や受け答えが功を奏した部分もあるのかもしれないと私自身は感じた。その典型的なところが東京オリンピックについての質問への対応であり、菅首相は「世界の団結の象徴として開催を実現する決意を述べて、バイデン大統領からは改めてご支持をいただいた」と答えた。バイデン大統領からの具体的な言葉もなかった。このあたりは事前に打ち合わせていたのかもしれない。 オリンピックの質問についての菅首相の対応ぶりについては「曖昧(あいまい)」という声も多いだろう。ただ、そもそも立場上、現段階で具体的に答えるのは極めて難しかったはずだ。少なくとも淡々と答えることでその場は進んでいった。 さらに、アメリカの記者からの銃規制についての質問にバイデン氏が答えた後に、バイデン氏が菅首相に意見を聞いたが、菅首相は意見を述べず、日本側の記者の質問を受けた。このあたりはバイデン氏には全く悪意などはみえなかったが、銃規制はアメリカではかなり党派的な問題であるため、答えない方が日本としては得策だったのかもしれない(「規制を何とかしてほしい」とか、一言くらいアメリカ側に注文してもよかったという気もしたのは筆者の本音だが、それは菅首相のスタイルではないのかと思う)。