メディアレップ「CCI」「DAC」の誕生とインターネット広告市場の幕開け[第2部 - 第9話]
詳しく聞いてみると、「Yahoo!はジェリー・ヤンという学生がやっている会社で、ソフトバンクが100億円を出資して筆頭株主になったんです」とのことでした。「何それ? いつ?」と尋ねると、「1995年の秋に2億円出資して5%の株式を取得していたんですが、4月に追加で100億出資して、37%の株式を取得して筆頭株主になったんです」と返されました。投資金額の大きさと株価の成長の速さに驚愕しましたね。さらに、「日本法人はソフトバンクがやるという約束をして、出資比率はソフトバンクが60%(出資額1.2億円)に対し、米Yahooが40%(出資額0.8億円)です」と言うので、もっと驚きました。こういった経緯で、僕はYahoo! JAPANの創業を知りました。 IBM箱崎ビルのエスカレーターを上がったところに小さく間仕切りがあり、そこがヤフー株式会社のオフィスでした。当初、社員は3名だけ。社長は当時ソフトバンクの社長室長だった井上雅博さんで、1号社員は後にグーグル日本法人の代表を務めることになる有馬誠さんでした。
佐藤:1996年の4月、Yahoo! JAPANがサービスを開始しました。旭通信社にも有馬さんが営業に来たのを覚えています。
1996年6月、株式会社サイバー・コミュニケーションズ設立
加藤:Yahoo! JAPANがサービスを開始する1ヶ月前、ソフトバンクの孫正義さんと電通社長の成田豊さんが会談したと言われています。 のちに複数の関係者から漏れた情報によると、電通がYahoo! JAPANの広告枠をテレビや新聞のように全部買い取る提案をしたところ、孫さんが断ったそうです。なぜなら、インベントリ(広告枠の在庫)が予測できないから。広告枠の数があらかじめ特定できるテレビや新聞などのメディアと違い、インターネット広告の表示回数は基本的にページビューによって決まります。過去のページビューはきちんとわかりますが、1週間後のページビューを正確に予測することは難しいため、物理的に広告枠をすべて事前に買い切ることはできない、と。その代わりに、Yahoo! JAPANの広告の販売会社を、ソフトバンクが49%、電通が51%の出資比率で合弁会社として設立することになったそうです。 Yahoo! JAPANがサービス開始をした4月頃にこの話を聞いたのですが、その会社ができるのが6月だと聞いて、「随分早いな」と思いました。オフィスは箱崎ビルのソフトバンクの中、つまりヤフーのオフィスの隣にできるとのことでした。こうして設立されたのが、株式会社サイバー・コミュニケーションズ(以下CCI)です。電通第17営業局の番匠博隆さんが代表取締役に就任し、新聞局から藤田明久さんが常勤取締役として出向されていました。電通の新聞局は代々社長が出る部署だったので、力の入れ具合は相当なものだったと思います。 杓谷:テレビ局やラジオ局は新聞社の資本で発展していったという歴史的な経緯があるので、電通においても新聞局の影響力が強いと言われています。また、毎年電通が発表する調査レポート「日本の広告費」では、このCCIの成立をもって、日本のインターネット広告市場の始まりと位置付けていますね。当時のソフトバンクのプレスリリースはこちらです。 ・ 電通とソフトバンク、新会社「サイバー・コミュニケーションズ」を設立日本初のインターネット広告専門の広告会社 加藤:CCIの第1回メディア説明会に僕は参加したんですが、「とにかく買います、とりあえずある枠全部買います」と言ったら怒られて(笑)。ちなみに、1996年の年末にCCIの第1回セールスパートナー大賞という賞があったんですけど、僕はその大賞を取りました。一番最初のCCIの代理店アワードは日広が取ったんです。