メディアレップ「CCI」「DAC」の誕生とインターネット広告市場の幕開け[第2部 - 第9話]
広告枠ではなく「人」をターゲティングする手法が既に存在
加藤:「Hot Cafe」のソフトで画期的だったのは、ユーザーを選んで広告を配信できるという点でした。ウェブサイトの中の特定の広告枠に広告を出すのではなく、サーバー側で「asahi.com」「千里眼」「富ヶ谷」などのサイトを見ていたということを把握し、その閲覧履歴に応じて広告を表示することができました。
杓谷:今で言うオーディエンスターゲティング(ユーザーの行動履歴に応じて広告を配信する仕組み)に近い配信手法が、この時代に既に存在していたわけですね。 加藤:その通りです。すでにターゲティングの発想があって、これはすごいと思いました。1ページビュー当たりの料金が、単純な「広告の販売価格÷ページビュー」の割り算じゃないところが特に面白いなと思いましたね。 どうしてこういう広告商品を作ったのかと聞くと、「米国のYahoo!を真似した」とのことでした。当時は「ゼネラルリーチ」と呼ばれる、誰に対しても同じ広告を見せるという方法が一般的でしたが、ハイパーネットではアメリカの広告手法をすでに研究していたんですね。「なるほど、アメリカは進んでるな」と思いました。
1996年1月、ヤフー株式会社が創業し、4月にサービス開始
加藤:Windows 95が発売されたのが1995年の11月で、翌年1996年の1月5日には、ヤフー株式会社(現LINEヤフー株式会社)ができました。当時、ソフトバンクは水天宮駅前のIBM箱崎ビル(現MSH日本橋箱崎ビル)に本社があり、パソコンの専門雑誌をたくさん出版していたので、僕はその広告枠を仕入れに毎月通っていました。
1996年4月、ソフトバンクのオフィスに行くと、「加藤さん、アメリカにYahoo!というサービスがあるのをご存じですか?」と担当者に聞かれました。「『千里眼』みたいな検索エンジンでしょ?」と返すと、「はい、千里眼と同じで、ディレクトリ型でいろんなサイトを紹介している辞書型の検索サイトです」と。「千里眼」は当時早稲田大学が開発していた検索エンジンですね。