アインシュタインが論文に書いた宇宙の形とは?「宇宙の形が3次元空間R3ではなく『3次元球面S3』だったら……」
宇宙はどんな形をしているのか? その謎に迫るために取り入れられているのが「トポロジー:位相幾何学」と呼ばれる数学です。このトポロジーの中でも、超弦理論との関係から近年注目されている「結び目理論」や、宇宙空間を考えるうえで重要になる「高次元幾何学」を中心に、この不思議な世界を紹介する新刊『宇宙が見える数学』。この記事では、宇宙の形を考えます。「大きさは有限だけど、端はない。まっすぐ進んでいくと、もと居た場所に戻る!」そんな宇宙の形が想像できますか!? 【宇宙はどんな形?】「3次元空間」が「4次元空間」の中で曲がっている? *本記事は『宇宙が見える数学』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。
3次元空間R3ではない宇宙モデル
アインシュタインは有名な「アインシュタインの宇宙項」を「アインシュタイン方程式」に導入した論文のなかにこう書いています(図1)。 「宇宙の形が3次元空間R3(*アールスリー:Rは二重線、3は肩付き)ではなく、3次元球面S3(*エススリー:Sはイタリック、3は肩付き)だったら……」 円周(1次元球面)を式で書くとどうなるでしょう。これは、 xの2乗+yの2乗=Rの2乗(Rは正数の定数で、円周の半径) です。では、球面(2次元球面)は式で書くとどうなるでしょう。 xの2乗+yの2乗+zの2乗=Rの2乗(Rは正数の定数で、球面の半径) です。これは1次元球面の場合の一般化です。変数が1個増えました。これら2式は高校までに習います。
3次元球面を式で表すと?
3次元球面S3は式で書くとどうなるでしょうか? xの2乗+yの2乗+zの2乗+wの2乗=Rの2乗(Rは正数の定数) です。ここでもRは3次元球面S3の「半径」と言うべきものです。1次元球面、2次元球面の場合の一般化です。2次元球面の場合より、変数が1個多いです。 変数と半径を表す文字は違いますが、同じ式をアインシュタインが書いています。物理学の難問を考える上で、このアイデアはとてもよいものでした。 ただし、3次元球面の概念を最初に言ったのはアインシュタインではありません。もっと前から自然に考えられていました。宇宙の形が3次元球面だったら?というアイデアもアインシュタインが初めて出したわけではありません。もっと前から考えられていました。アインシュタインが行ったことは次です。 「宇宙の形が3次元球面だったら、当時の科学者が疑問に思っていたことがうまく説明できる」