アインシュタインが論文に書いた宇宙の形とは?「宇宙の形が3次元空間R3ではなく『3次元球面S3』だったら……」
ビッグバンと宇宙の膨張
ところで、宇宙は曲がっているとか、3次元球面だとかいわれると、宇宙の外側はどうなっているのか?と気になるかもしれません。しかし、「宇宙の外側」が何なのかを考えなくても、私たちの行う物理実験の予言はできます。だから外側は考えなくてよい、という立場です。 宇宙空間は、大昔、1点もしくはほぼ1点にあったけれど、それが「爆発」して大きくなったと多くの理論物理学者が信じています。これはジョージ・ガモフという偉大な物理学者が予言したものでした。 発表当初、ほとんどの物理学者はこの理論を受け入れませんでした。そのため、この理論は「ビッグバン理論」とからかいを込めて呼ばれました。しかし、その後、宇宙マイクロ波背景放射が発見されました。これによりガモフのビッグバン理論は、正しいことがわかったのです。 さて、ビッグバン(大爆発)の瞬間、このほぼ一点にあったものは宇宙空間そのものです。そのため、その外側は考えても意味がありません。ちなみにビッグバンより前の時間というのも考えても意味がありません。控えめにいえば、どちらも意味がなかろうという立場で、私たちの行える実験の結果は予言できるからです。 ビッグバンの直後の宇宙が小さいときを考えて、外へは出られないモデルを考えましょう。「外へ出られないけれど大きさが小さい」ということは、気持ちとしては3次元球面S3が大きくなっていると考えるとイメージしやすいでしょう(図2)。
3次元球面と4次元立方体の、とある関係
この3次元球面S3と4次元立方体にはある関係があります。その話をするために、まず次元を下げて考えます。そのあと次元を上げて類推することにします。 図3を見てください。まず、正方形を転がしたとしましょう。正方形の角(かど)はだんだんと丸まっていき、やがて円になります。 この意味では正方形(2次元立方体)と円(1次元球面)は「同じ」ものです。やや厳密に言うと、「中身が空の正方形」は円周と同じ、「中身が詰まった正方形」は円板と同じです(注:円板は境界があって中身は詰まっている。円周は中身が空)。 ここで「同じ」というのは、数学的に言うと、「同相」「微分同相」「二次元空間R2のアイソトピー」の各3個の基準で「同じ」です。これらの専門用語については、ここでは説明しませんが、ご興味のある方は調べてみてください。