「身近な鳥が絶滅危惧種に!?」 なぜいまスズメは激減しているのか?
――じゃあ、緑地を多くすればスズメは増えるということですか。 三上 それも単純にそうとはいえなくて、森林にスズメは住まないんです。でも、森林を住宅地に造成するとスズメの生息場所になる。 不思議なのは、過疎地になって人間が住まなくなるとスズメもいなくなってしまうんです。家屋はあるし、荒れているけれども農地はある。巣を作る場所もエサを取る場所もあるのに人間の姿がなくなるとスズメも消えていきます。 ですから、ただ単に緑地を増やすというだけでなく、人間との関わりが重要だということです。 ――スズメって不思議な鳥なんですね。ちなみにスズメがいなくなることで人間に何か影響が出るのでしょうか。 三上 スズメは街の中で雑草の種や害虫を食べたりしています。ですから、スズメがいなくなると雑草が増えたり、街路樹の葉が虫に食われたりします。それを抑制している効果は大きいと思います。 それから、スズメは人間にとって身近な鳥で、スズメを見ると多くの人がホッとしたり、楽しい気分になったりします。それが見られなくなるというのは精神的な寂しさがあるのではないかと思います。 ――ちなみに、スズメをこれ以上減らさないためにはどうしたらいいのでしょうか。 三上 まず、街中の木をムダに切らないことです。それから、巣を作る場所が不足しているので、巣箱などを設置すれば増えるかもしれません。 ただ、私が個人的に心配しているのは、スズメは激減していますが、同じようにオナガやセグロセキレイなどの鳥も危機的に減っています。 年配の方は、そうした鳥のことも知っているのですが、最近の子供は鳥を見てもどの鳥だかわからないことが多いようです。よく「生物の多様性が重要だ」といわれていますが、私はそこに何か違和感があります。 ですから、スズメが激減しているというニュースをきっかけに、まずは身近にいる鳥を見て「なんか鳥がいるのはいいね」と思ってもらえることが大切なのかなと思っています。 * * * 人と共栄してきたスズメが激減している。それは人間の暮らし方を見直してほしいというスズメからのメッセージなのかもしれない。 取材・文/村上隆保 イラスト/はまちゃん 写真/時事通信社 PIXTA