クリスマスの新定番「モスチキン」開発秘話。ルーツは日本人になじみ深い「意外な食べ物」だった!
当時のモスバーガーは、チキン系のサイドメニューといえばナゲットくらいしか用意がなく、子どもやファミリー層には人気な一方、もっと幅広い層を狙えるチキン商品を生み出す必要があったといいます。 また、「作りたて」をウリの一つにしている反面テイクアウト需要に応えきれておらず、時間がたってからでもおいしく食べられる商品を強化する必要もありました。こうした理由から、モスチキンの開発が始まります。 新商品を考案するうえで、毎日のように「チキン」と名の付くものを食べまくったと話す寺本さん。中でも特に研究したのが、某大手フライドチキンチェーンでした。
夢で鶏の大群に追いかけられるほど研究を重ねた結果「食べにくく、手が汚れる」「同じ商品でも入っている部位が異なるため、食べるピースによっては不公平感を持つこともある」といった点が、モスチキンが生まれるヒントとなりました。 最終的に整理したキーワードが「大人も食べられるチキン」「冷めてもおいしい」「テイクアウトに強い」「他にはないチキン」「片手で食べやすい」「大きさが均一」など。 これらを軸に、形・味・衣の3面からさらに具体的な商品へと落とし込んでいきました。
■「骨なしチキン」食べやすいのにあまり見かけないのはなぜ? まず形で寺本さんがこだわったのが「骨付き」であること。持ち手として骨があることで、食べやすさを高められると考えました。 結果として選んだのは、骨付きかつ1羽から同じような形の肉を取れる、手羽付の胸肉。胸肉だけではパサパサしがちなところ、皮も一緒に調理することで、ジューシーさも感じられる点もポイントになったそうです。 持ち手以外の部分はストレスなく食べられる素晴らしい形ですが、モスチキン以外の各チェーンではあまり見かけず、不思議に感じます。この点を寺本さんに質問したところ、次のような返事がありました。
「フライドチキンでメジャーなもも肉は、サイズ感がちょうど良いのですが、モスチキンに使っている部位は、切り分けてある程度サイズを小さくしないと、結構ボリューミーなんです。 もちろんそのまま調理する考えもありますが、そうすると大きい分、フライドチキンにしては高価になってしまいます。一方で、切り分けるのも手間がかかることから、あまり利用するチェーンが少ないのではないでしょうか」 ちなみに発売当初から現在まで、モスチキンの調理工程では、大きな手羽付の胸肉を人の手で一つずつ均等になるよう切り分けているそうです。そうした手間がかかりつつ、300円少々で販売している企業努力には頭が下がります。