「エムポックス(サル痘)」で日本初の死亡例、免疫不全の30代男性 厚労省発表
厚生労働省は、天然痘に似た症状をもつ感染症「エムポックス(サル痘)」について、国内で初めて死亡者が確認されたことを明らかにしました。この内容について中路医師に伺いました。 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
厚生労働省が発表した内容とは?
編集部: 今回、厚生労働省が発表したエムポックスの感染で死亡したケースについて教えてください。 中路先生: 2023年12月13日、厚生労働省はエムポックスに感染した男性が死亡したと発表しました。厚生労働省によると、亡くなったのは埼玉県に住む30代の男性で、2023年9月にエムポックスの感染が確認されており、2023年11月に死亡が確認されました。 男性に海外渡航歴はなく、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染し、免疫不全の状態でした。日本国内でエムポックスに感染した患者の死亡が確認されたのは初めてです。 エムポックスをめぐっては、2022年5月以降、欧米などで感染が拡大し、2022年7月に日本で初めて感染者が確認されました。それ以降、2023年12月3日までに227人の感染が確認されています。 以前はサル痘と呼ばれていましたが、WHO(世界保健機関)の推奨を受け、厚生労働省が2023年5月に名称をエムポックスに変更しています。 エムポックスは感染した人や動物の体液・血液に接触したり、近い距離で長時間飛沫を浴びたりすることで感染する可能性があり、厚生労働省は「手の消毒など基本的な感染対策をおこなうとともに、発熱や発疹など体調に異常がある場合は身近な医療機関に相談してほしい」としています。
エムポックスとは?
編集部: 今回、日本で初めての死者が出たエムポックスについて教えてください。 中路先生: エムポックスは、サル痘ウイルス(エムポックスウイルス)の感染による急性発疹性疾患で、主にアフリカ中央部から西部にかけて発生しています。 主な症状は発熱と発疹で、多くの場合は2~4週間ほどで自然に回復しますが、子どもなどで重症化や死亡した症例の報告もあります。 サル痘ウイルスの感染経路は、ウイルスに感染した動物に噛まれたり、血液や発疹などと接触したりすることによる感染が確認されています。 ヒトからヒトへの感染は稀ですが、濃厚接触者の感染やリネン類を介した医療従事者の感染の報告があることから、感染者の飛沫や体液、発疹などを介した感染経路が考えられています。 エムポックスの潜伏期間は6~13日とされており、潜伏期間の後、発熱、頭痛、リンパ節腫脹、筋肉痛などの症状が0~5日続き、発熱から1~3日後に発疹が出現します。 ただし、発熱、頭痛、リンパ節腫脹などの前駆症状が必ずしも認められない事例が報告されているので、注意が必要です。